AIの登場!?営業職の未来はどうなるの?
SQiL Career Agent 事業責任者の梅田翔五です。
僕は営業職のキャリア支援を専門としているため、よく求職者や就活生からこんなご質問をいただきます。
「今後も営業職は、なくならないと思いますか?」
「なくならないと思います。ただ、まだ減っていくでしょう。
今後の営業職は、テクノロジーを使いこなし、人にしかできない業務領域のエキスパートが生き残る世界観になっていきそうです。
つまり、今までよりも難しい仕事になっていく可能性が高いです。簡単な仕事なら次々にテクノロジーが代わりにやってくれるからです。」
本記事では、このご質問に対する僕なりの見解や回答をまとめています。
営業職の転職とキャリアに詳しい者の私見として、ぜひご一読ください。
目次[非表示]
- 1.営業職の人数は年々減っている
- 2.テクノロジーは敵か味方か
- 3.営業の居場所
- 4.まとめ
営業職の人数は年々減っている
まず皆さん、営業職の人口は年々減ってきているのはご存知でしょうか。
少し古いデータですが、国勢調査によると2000年に468万人いた営業職が、2015年には336万人にまで減ったそうです。
その減少数、15年で約130万人。毎年8〜9万人が営業職から離れていった計算になります。
この要因は複数あるかと思いますが、1つ可能性として大きそうなのは
「インターネットやAIなど、テクノロジーの台頭」
テクノロジーが人の仕事を奪うという話、今どき聞いたことない人はいないでしょう。
また、これからますますこの流れが顕著になることも容易に想像できます。
特に最近は、ChatGPTなどAIに関連するニュースが毎日耳に入るので、危機感を覚えている方もいるはずです。
ではそんな中、我々営業パーソンはどのように生き残っていけば良いでしょうか。
テクノロジーは敵か味方か
そもそもテクノロジーは、我々の敵なのでしょうか。もちろん答えは NO。
テクノロジーは人間の仕事を奪うのではなく、人間の代わりに仕事をしてくれたり、効率的にしてくれる存在です。ここの捉え方がまず大切。
つまり、テクノロジーが業務を代わってくれるのなら、人間は人間にしかできない業務に集中すれば良いのです。
テクノロジーのおかげで、営業という仕事も(というかモノを売る活動全般)、非常に効率化される時代になってきました。
※ここで言うテクノロジーとは、ChatGPTを中心としたAIはもちろんですし、SFAやMAツール、オンライン会議ツール、社内チャット、タスク管理、WEBセミナー配信、ECサイト、SNSなど、マーケや営業活動に関わる情報技術全般を指してます。
「お客さんがメールを開封したかわかる」
「カレンダーツールのURLを送り、お客さんに日程を選んでもらう」
「オンラインで商談が簡単に行える」
僕が営業を始めた13年前では、上記のような体験は想像すらできませんでした。
メールを一例にあげますと、メール配信サービスやMAツールを利用することで、送信したメールが開封されたかや、リンクがクリックされたかどうかも把握可能です。
営業担当者はそれらの情報から顧客の関心度の高さを予想し、接触タイミングやアプローチ方法を最適化できます。
さまざまなテクノロジーを活用することで、営業担当者は効率的に業務を遂行し、時間を有効活用することができるようになりました。
また最近驚いたのは、メール文面作成、商談前の事前準備、提案資料作成なんかも、AIを活用することで恐ろしいほど効率化できるようです。
ですが、営業職には人間でないとできない業務が、まだたくさん残っています。
例えば、
- お客さんが自分でも気づいていないニーズを顕在化させるヒアリング
- お客さんの想像をはるかに超える企画やソリューションの提案
- 悩んでいるお客さんの背中を後押しするクロージング
- お客さんに「あなたから買いたい」と思ってもらうリレーション構築
このあたりは、まだ人間にしかできないと僕は考えています。(あくまで今はですが)
つまり人間だからこその価値を発揮し続ける営業パーソンであれば、必然的に生き残るのではないでしょうか。むしろ生き残るどころか、価値の高い人材にもなりえます。
そこでこれから重要になると予想しているのが「人間にしかできない業務を見つける力」です。
これは裏を返すと「テクノロジーは何ができるか、最新情報を常にキャッチアップしておくこと」が重要という話です。
テクノロジーで何ができるかを把握せずして、人間がやるべき業務を見つけることはできません。
僕達は人間としての権威性を保つべく、最新のテクノロジーを常に使う側に回らないといけないのです。テクノロジーで既にできることに時間を取られ、漫然と日々営業活動をしている営業パーソンは、気づけばテクノロジーに捕食されてしまう可能性があります。
ここで具体的に1つキャリア的なアドバイスを申し上げるなら、新卒や若手の営業の方は、テクノロジー導入を積極的に進めている企業に勤めることを薦めます。テクノロジーに関するリテラシーは本人の努力も必要ですが、それ以上に環境要因が大きいからです。
テクノロジー導入が遅れている企業に勤めるというのは、今の時代を生き抜く営業パーソンにとってはリスクと言えます。ITリテラシーが、転職市場での評価材料の1つにもなる時代です。
ただ勘違いしてはいけないのは、本質的な営業スキルとテクノロジーは別個のものです。「営業スキル」と「テクノロジー」の関係性を戦場に例えるなら、「営業スキル」は、兵士達の狙撃の命中率みたいなもの。訓練を沢山することで狙撃精度を高め、なるべく的に命中するようにさせることです。
一方で「テクノロジー」は、その兵士達が使う銃の飛距離や威力、弾数を飛躍的にアップさせるものです。どんな狙撃の名人だったとしても、それが火縄銃では現代の戦場では生き残れません。最新の銃を導入し兵士達がその使い方を知っていてこそ、兵士達の狙撃スキルが活かされるのではないでしょうか。
同様に営業職パーソンも最新のテクノロジーをキャッチアップしていくことと、自身の営業スキルを高めること、この双方を怠ってはいけないと感じます。
営業の居場所
営業業務の多くをテクノロジーが代替えしていく中、人間にしかできない業務もあると書きましたが、それは特にどこらへんにありそうなのか。その点について述べます。
キーワードは「複雑性」と「価格」です。
「複雑性」について
人はモノを買う時にお金を払いますが、このお金を払うという行為は常にリスクをはらんでいます。「払った金額に対し、得られる価値の方が低いリスク」です。
◯ 払った金額 < 得られる価値
× 払った金額 > 得られる価値
要するに、お金払ったけど思ってたのと違ったという状態。「このラーメン1,200円もするのに、不味い!」みたいな。こういう状況は誰もが避けたい。
ですので、このリスクを最小限に抑えるため、人はモノを買う前にそれ相応の情報収集をします。そしてその情報収集もインターネットを筆頭としたテクノロジーのおかげで簡単にできるようになりました。今の時代のお客さんは、昔よりも賢いなんて話をよく耳にします。最近だと、AIに聞いてみるなんてこともできますし。
ただ、そのインターネットでいくら情報収集をしても、どれを買えば良いかよくわからないという経験、皆さん1度はありませんか。
- 機能が多い
- プランが多い
- 提供会社数が多い
- 不確定要素が多い
- 専門用語が当たり前に使われている
- 実際に触れてみないとイメージが湧かない
- 情報が多過ぎて、信頼性の高いものがどれか不明 など
このインターネットでいくら情報収集しても、なかなか理解しきれない性質を「複雑性」と、ここでは呼ぶことにします。この複雑性の高い分野のプロダクトやサービスほど、営業の居場所が広く残っていると僕は考えています。
例えば、昔僕は生命保険に加入しようとした際、自分でいろいろ調べたのですが、わからないことがいくつもありました。保険は種類がたくさんあるし、説明が色々小難しい。そもそも今まだ健康だから、ちょうど良い掛け金とかもわからない。
ある程度までは理解できた気がするが、自分だけで意思決定するには自信が持てない状態でした。結局、複数の生命保険を取り扱う店舗型の代理店に行き、自分で調べた情報を答え合わせするように疑問や懸念をお店の人にぶつけ、最終的にプランを決めました。
上記はtoCビジネスの例ですが、toBにもこのような複雑性の高い商材が多くあります。というか、toBの方が多いかもしれません。特に大企業は、モノを買う時に関与する人の数や考慮しなければならない要素が膨大となり、複雑性が増します。
つまり、複雑性の高いモノを買う時には、信頼できる専門家へのニーズが生まれるということです。自分の疑問やモヤモヤを整理してくれ、自分に合った情報をわかりやすく教えてくれる、そんな人間だからこそできる繊細なコミュニケーションが、複雑性の高いモノの購買時には求められます。その専門家としての役割を担うのが、僕達営業パーソンです。
ネットで調べれば十分理解できる分野は、営業が不要になっていくとも言えそうです。
「価格」について
また、ここまで話した複雑性と一緒に考えていくべきが、2つ目のキーワード「価格」です。
これは簡単な話ですが、人は買うものが高ければ高いほど慎重になります。金額が高いほど、先ほども書いた「払った金額に対して、得られる価値の方が低いリスク」も高まるからです。
アパレルECサイトで3千円のTシャツは気軽に買えますが、20万円のスーツならちゃんと試着したいし、お店の人にトレンドなんかも教えてもらいたいですよね。複雑性同様、高いものを買うときほど、信頼できる専門家へのニーズが発生するように思います。安いものほど営業が不要になっていくとも言えそうです。
この『複雑性』と『価格』を4象限で表すと下記のようになります。
右上に近づくほど、信頼できる専門家ニーズが高まる、つまり営業の居場所が広く残る領域であるというのが、僕の考えです。そして左下に近づくほど、営業は不要になっていくでしょう。安くて単純なものは、もうネットで完結するのが今の時代。いちいち営業に会うのはわずらわしいと考えるのが自然な流れ。要するにテクノロジーが発達するほど、営業パーソンが生き残る業界と駆逐されていく業界の差が顕著になっていくと予想しています。
まとめ
- テクノロジーを味方につけ、人間がやるべき業務を見出すこと
- 営業がこれからも必要な業界や商材を見出すこと
上記2点が重要だとここまで述べてきました。
今後の営業職は、今までよりも難しい仕事になっていく可能性が高いです。簡単な仕事なら次々にテクノロジーが代わりにやってくれるからです。
だからこそ、その生き残った営業パーソン達は重宝されるのではないでしょうか。
営業職は、今以上に専門性の高いプロフェッショナルな職業と扱われる日がやってくると考えています。
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