インサイドセールスの介在価値と得られるスキル
とあるSaaSスタートアップで、インサイドセールスのリーダーを務めている坂瀬心と申します。
僕はこれまでにSaaS大手とSaaSスタートアップの2社でインサイドセールスを経験してきており、今の会社ではインサイドセールス組織の立ち上げ時から勤めています。
本記事では、
- インサイドセールスに興味を持っている方
- これからインサイドセールスにチャレンジしてみたい方
に向けてインサイドセールスの具体的な仕事内容と、得られるスキルについて解説していきます。
この記事を読むことで、インサイドセールスという仕事のイメージが湧き、「これから挑戦してみよう!」「もっと頑張ってみよう!」と思える方が1人でもいたら嬉しいです。
目次[非表示]
インサイドセールスとは何か
インサイドセールスとは、直訳すると「内勤営業」。
主に電話やメール、オンライン会議システムなどのツールを使い、見込み顧客(リード)と接点を持つ営業手法のことを指します。インサイドセールスが生まれたアメリカでは、国土が広大で、直接的に訪問する営業活動が非効率だということで、1990年代にこの手法が生まれました。
また、インターネットやデジタルコミュニケーションが普及し、物理的な距離を超えたアプローチがより簡易になってきたことも、インサイドセールスの普及を後押ししました。コロナウイルスの流行による対面営業の自粛に伴い、インサイドセールスを導入する企業は日本国内でも急増しました。
インサイドセールスは他部署との協力を通じて、企業全体の顧客体験を向上させる役割も果たします。
インサイドセールスが普及した背景
購買行動の変化
現代では、企業の見込み顧客の獲得手法はインターネット経由が多くなってきています。
また、インターネットでの情報収集が容易になったため、そもそも営業には頼らず、自社内で購買検討を進める見込み顧客も増えています。そういった直接お会いすることができない見込み顧客に対し、電話やメールなどで示唆したり役立つ情報を提供していくインサイドセールスの需要は近年高まっています。
働き方の変化
労働人口の減少や新型コロナウイルスの流行などの影響もあり、近年働き方が大きく変化し、そして多様化してきています。その変化と多様性に対応のしやすい営業職として注目が集まったのが、インサイドセールスです。
インサイドセールスはもともとオフィスからは出ず、遠隔で見込み顧客にアプローチをするため在宅勤務との相性が良いのです。子育てや介護など様々な理由でオフィス勤務ができない方でも従事がしやすく、また地方在住の方でも自社の営業組織に参画していただくことができます。また、CRMやMA、CTI、Web会議システムなどの普及も、インサイドセールスの広がりを後押ししたと考えられます。
※CRMとは、Customer Relationship Management(カスタマー リレーションシップ マネジメント)の略。
日本語では「顧客関係管理」または「顧客関係性マネジメント」と訳され、顧客情報や行動履歴、顧客との関係性を管理し、顧客との良好な関係を構築・促進すること、またそのためのシステムを指します。※MAとは、Marketing Automation(マーケティング オートメーション)の略。
マーケティング活動を可視化し自動化できるシステムを指します。 マーケティングに伴う作業は、見込み客の獲得から顧客情報の管理、リード客の育成・絞り込みなど多岐に渡ります。 マーケティング活動には人手と時間、手間が必要です。 MAツールはそのような複雑な作業を自動化し、効率的なマーケティング活動を実現します。※CTIツールとは、Computer Telephony Integration(コンピューター テレフォニー インテグレーション)の略。
電話/FAXをパソコンと連携させるシステムの総称です。電話がきた際にPC画面上に着信先の顧客情報が表示されたり、過去の取引データを確認できたりするため、顧客対応部署で用いられることが多いシステムです。
インサイドセールスの介在価値
顧客が自ら問合せをしてきて、営業担当者と初めて接触する頃には、顧客は購買に至るまでの準備や情報収集が57%も完了しているというデータ※があります。
上記データに伴い、顧客の購買活動は今後より便利かつ簡単になっていくと言われることがありますが、経験上、私はそうは思いません。
むしろ逆だと考えています。
※アメリカの調査会社コーポレート・エグゼクティブ・ボード社が1400社以上のBtoB企業を調査した結果、購買プロセスの57%は営業担当者が訪問する前に終わっていることが判明。
顧客はインターネットを駆使し、情報をたくさん取得することはできていますが、以下のような悩みが同時に発生しています。
「情報が溢れすぎていて、何が正しいのかわからない」
「興味があるけど、何から始めればいいのかわからない」
「同じような問題が発生しているが、解決方法がわからない」
つまり取得した情報の取捨選択や、その情報の活かし方がわからない状態になっているのです。
取得した情報から自らの課題解決案を導きだせる顧客はほんの一握り。そこでインサイドセールスがガイド役となり、情報の取りまとめや現状の状態の言語化、理想と現実とのギャップとなっている要件の洗い出し・優先順位付け、ギャップに対してのソリューション提案などを行います。
この活動こそがインサイドセールスの介在価値だと私は認識しています。
インサイドセールスが持つべき2つの視点
①獲得した見込み顧客に、態度変容を促すにはどうすればよいか?
②態度変容が起きやすい見込み顧客の特徴や傾向は?
①獲得した見込み顧客に、態度変容を促すにはどうすればよいか?
態度変容とは、外的な影響で意識や行動が変化すること。
インサイドセールスは、電話やメールでのアプローチを行い、見込み顧客に態度変容を促します。つまり自社商材に興味を持ってもらったり、「話を聞いてみようかな」と行動に移してもらえるように働きかけるのです。
特に顧客がお問い合わせをした背景を想像し、解決すべき課題やお困りごとを「自社商材であれば解決できる」というイメージを持ってもらうことが重要です。
②態度変容が起きやすい見込み顧客の特徴や傾向は?
どのような見込み顧客が受注まで進みやすいのか、商談獲得しやすいのかなどを定量的に分析し、可視化します。そうすることで、態度変容しやすい見込み顧客や自社のサービスが価値提供できる見込み顧客の像が明確になってきます。
また、ターゲットとなる見込み顧客が明確になることで、アプローチ時に伝えるべき情報や話法もより明確になり、トークスクリプトの精度も上がります。
さらにその情報をマーケティング部門に共有することで、マーケティング施策にも活かすことができ、企業全体に価値貢献ができるのです。
これら2つの視点を常に持ちながら活動することで、インサイドセールスとして大きな価値を提供できると考えています。
インサイドセールスで身に付くスキル
営業力
インサイドセールスでは主に電話でお客様のご状況をヒアリングし、事前情報をもとに仮説を構築します。また短い時間の中でご提案やクロージングもしていかないと商談の獲得はできません。
これらは営業の基本行動であり、アプローチすべき見込み顧客が多いインサイドセールスは、この基本行動を日々繰り返し、PDCAを回します。
「顧客から自社サービスの価値に対する合意を得る」という観点で営業力が高まると言えます。
実行力
インサイドセールスは手を動かさないと、成果が出ません。そのため、成果を出す過程で、実行力が高まると考えています。
顧客に電話やメールなどでアプローチをし、1つ1つ行動を実行しきらないと商談という成果には結びつきません。
戦略立案力
インサイドセールスの目的は、売上やMRR(月次経常収益)を最大化することです。
その目的を果たすためには、マーケティング部門からどのような見込み顧客をパスしてもらえばアポイントにつながるのか、フィールドセールスにどのようなアポイントを渡せば受注につながるのかを考え抜く必要があります。そのため部門を横断した戦略立案力がつくと言えます。
インサイドセールスのキャリアは売上やMRRという成果を出すために、電話やメール、オンライン会議、セミナーなど打ち手を幅広く考える必要があり、後のキャリアにも有用なスキルをたくさん得ることができます。
まとめ
インサイドセールスにはビジネスの多くの要素が詰まっています。だからこそ難しくもあり、とても面白い営業職です。
最近では、ビジネスサイドの登竜門としてインサイドセールスにアサインされるという企業が多くありますが、個人的にはそんなに簡単なものではなく、専門性が非常に求められるポジションだと考えています。事業成長のためにも重要度が高い役割です。
少しでも興味を持った方はぜひインサイドセールスにチャレンジしてみてください!