SaaS大手のフィールドセールスから、SaaSスタートアップのインサイドセールスに転職した理由
SQiL Career Agentにて、インサイドセールス関連の記事を寄稿している坂瀬心と申します。
私はこれまでSaaS大手企業にてフィールドセールスとインサイドセールス、SaaSスタートアップにてインサイドセールスを経験してきました。
SDR、BDR、リサイクルやナーチャリングなど、インサイドセールスの役割として挙げられるようなものは、一通り経験してきたと自負しています。
今回の記事ではSaaS大手企業でフィールドセールスとして働いていたところから、スタートアップのインサイドセールスに転職した理由や、その時に考えていたことなどをご紹介いたします。
今転職を考えている方やインサイドセールスについて情報収集をされている方の参考になれば嬉しいです。
※SDR
SDRは、「インバウンド型のインサイドセールス」を指します。
マーケティング部門が獲得した見込み顧客(リード)にアプローチします。資料ダウンロードや問い合わせなど、顧客の能動的な行動をきっかけとして接触を試みる営業活動です。
※BDR
BDRは、「アウトバウンド型のインサイドセールス」を指します。
自社が顧客にしたいターゲットに新規でアプローチしていきます。ターゲット企業側が、自社の製品やサービスを認知していない状態、かつニーズがあるかも全くわからない状態でアプローチすることになるため、アポイント設定のハードルやその後の商談の難易度も SDR に比べて高くなります。
※リサイクル
過去商談を行い、失注してしまったお客様に改めてアプローチをし再度受注を目指すサイクルのことを指します。
※ナーチャリング
見込顧客に対してコンテンツを提供したり、セミナーを開催したりすることで、見込顧客育成を行い態度変容を起こすことをナーチャリングといいます。
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インサイドセールスの重要性に気づかされたきっかけ
私は前職の国内大手SaaS企業では、新規事業の部署に所属していました。
新規事業ということでまだ人員も多くなく、組織が未成熟であったこともあり、インサイドセールスとフィールドセールスの役割が明確に分けられていませんでした。
つまり1人の営業がインバウンドリードの初回対応から、最後の契約までの一連の流れを全て担当する形です。
また、当時はコロナ流行前だったこともあり、商談は基本的に訪問が主でした。
- 営業が一連の流れを全て担当
- 商談は基本的に訪問
この2点を聞いただけでも、業務が煩雑化するイメージがつくと思います。
営業は、インバウンドで入ってきた顧客のアポイント調整などの「前工程」と、契約していただけそうな顧客をクロージングするという「後工程」を、バランス良く同時におこなう必要があります。
しかし業務が煩雑化し、どちらかの工程に時間が取られ過ぎてしまうと、安定した売上創出ができなくなってしまうのです。
例えば、単月の売上や契約数に必死になり、クロージング(後工程)に時間を取られ過ぎてしまうと、次の月にアポイントが全然入っておらず、その1ヵ月後には、クロージングできそうな案件の数が足りず、売上・契約数が全く足りないということが起きたりします。
さらには、売上が安定せず焦ることによって、営業パーソン本意の営業になってしまうということもありえ、全く良いことがありません。
そんな時に、社内でインサイドセールス組織が立ち上がりました。
この組織が立ち上がったことにより、上記したような多くの問題が解消され、売上をあげるための業務に集中できるようになったのをよく覚えています。
顧客対応を例にあげると、見込み顧客がインバウンドで流入してから「10分以内の対応が理想」と言われることが多いですが、インサイドセールスが立ち上がる前は、業務が煩雑化しており、10分以内の対応はほぼ不可能でした。
それがインサイドセールスチームの立ち上げ後は、10分以内の対応が可能となり、顧客の温度感が高いまま、フィールドセールスにトスアップされるようになりました。
また、オフラインイベントやウェビナー、ホワイトペーパーの企画など、顧客が求めている情報を、インサイドセールス組織がマーケティングチームと連携することにより、リードの数も質も飛躍的に向上することを体感しました。
これらの体験から、事業を大きく成長させるためにはインサイドセールスという自由度の高い司令塔的な役割が、営業組織に必要不可欠だと思うようになったのです。
※ホワイトペーパー
ホワイトペーパーとは、企業が解決すべき課題と要因を分析し、解決を実現する自社ソリューションの紹介などをまとめた提案書のこと。
インサイドセールスとしてやるべきこと
ここで少しだけ話が脱線しますが、インサイドセールスの役割について。
インサイドセールスの本来の目的は、売上最大化です。
営業をインサイドセールスとフィールドセールスに分業することにより、売上を最大化させることが目的なのです。
つまり売上に繋がらないアポイントをいくら生成しても、それは本来の目的からは外れた活動であり、意味がありません。
自社商材のターゲットから外れた顧客のアポイント、お時間はいただけるものの検討できないことがわかっている顧客のアポイント、決裁権も社内推進力もない担当者とのアポイントなど、売上に繋がる可能性の低いこれらのアポイントを「取らない」と決めるのもインサイドセールスの仕事です。
インサイドセールスとしてやるべきことは、マーケティングチームと連携し「自社が価値を提供できる顧客へいかに情報を届け、興味を持ってもらうか」、「フィールドセールスと連携していかに案件を契約まで進めるか」
この2つの橋渡しでありビジネスサイドの司令塔として動くべきポジションだと考えています。
未成熟なSaaSスタートアップにインサイドセールスとして転職
インサイドセールスの可能性に気づき、この活動を推進していこうと気持ちが高まったのは良かったのですが、ここでいくつかの壁にぶつかることになりました。
前職は会社の規模がとても大きく、それゆえに地方拠点と本社の間に深い溝があったり、セールス組織とマーケティング組織の間にも溝がありました。
組織は不可逆だとよく言いますが、大きくなればなるほど、これまでのやり方を変えるのは簡単ではないと思い知らされました。
このあたりで、転職という選択肢が頭にチラつき始めます。
まだ、The Model的な組織ができあがっていないスタートアップで、インサイドセールス組織の構築を自分の力でおこなってみたいと思うようになったからです。
シリーズA ~Bあたりで、インサイドセールス組織の構築が必要になってきているSaaS企業への転職活動を始めました。
※シリーズ
シリーズとは、スタートアップに対する投資ラウンドの1つの段階のことです。アメリカのシリコンバレー発祥の考え方で、投資家がスタートアップに対する投資額を決める際の判断材料として活用されています。
インサイドセールスとして転職してどうだったか
前職でもインバウンドリードの対応は行っていたため、インサイドセールスの基本的な業務はすぐにキャッチアップできましたが、フィールドセールスからインサイドセールスという職種の変化だけではなく、大手からスタートアップという事業や組織の成熟度の変化もあったため最初はとても大変でした。
業務フローやルールが全く整っていなかったり、そもそも営業活動の考え方から全く違っていたからです。
リード流入数はもともと多くあったため、会社全体としてSDRに頼りっきりで、ハウスリストには全く手を付けられていない状態でした。
私が入社したタイミングはIS全体としても人数を増やしていたタイミングだったため、まずは保有していたハウスリストに対してメールや電話、ホワイトペーパー、ウェビナーを活用してリサイクルやナーチャリングをすることから始めました。
その後、BDRチームの立ち上げも任され、現在は改めてSDRチームのリーダーとして従事しています。メンバーをマネジメントしながら、マーケティングチームやフィールドセールスチームとの連携を進めており、当初思い描いていたような事業推進が少しずつではありますが、できている実感があります。
※ハウスリスト
ハウスリストとは、イベントやWebサイト、営業活動により集めた、企業で保有する見込客や顧客の情報のこと。
スタートアップに転職する際に気を付けたいこと
スタートアップは整っていないことばかりです。
私は現在の会社にはシリーズBのタイミングで入社しましたが、それよりも前のシリーズタイミングでの入社であれば、インサイドセールスという限定的な役割ではなく、マーケティングやセールス全般、カスタマーサクセスまで広く関わっていた可能性があったと思います。
まずは転職を考えている企業の事業や組織がどれくらいフェーズなのか、中途入社者にどのような役割を求めているかを把握することを強くお勧めします。
その上で元々在籍していた企業で体験した事象を言語化し、先回りしていくつか打ち手を考えておくと転職先の企業でも価値を発揮できると考えます。
また、スタートアップに中途入社する場合、注意すべきことが2つあります。
一点目。当たり前ではありますが、前職の企業と転職先の企業は状況が全て同じということはあり得ません。つまり、前職で上手くいったことが転職先でもそのまま上手くいくかというとそうではないですし、自分は新しく入ってきたばかりの人間だということを忘れず、既存メンバーの納得感を得ながら進めることが大切です。
これまでのやり方を否定するような発言も控えましょう。
二点目は、転職先の企業で何でも良いので成果を出した上で、新たなプロジェクトや業務改善に着手することです。
具体的にインサイドセールスでの成果例を挙げると、商談作成数だけではなく、ナレッジの言語化やフロー整備、議事録やファシリテーションなどなど。
どんなことでも良いので、「この人は、ちゃんと成果を出せる人なんだ」「この人は、色んな知識を持ってる人なんだ」と既存メンバーから信頼を獲得することが必須です。
どんな企業や組織でも同じだと思いますが、何の実績もない何の信頼もない人間がいきなり外からやってきて、いろいろ変えようと思っても、周りはついてきてくれません。
これからどんなことをしたいのか
プレイヤーとしてインサイドセールスの役割は満遍なく経験してきましたので、プレイングの割合を減らし、現在役割として担っているマーケティングやフィールドセールスとの連携はもちろん、事業開発的な側面でプロダクトチームとの連携も今後取っていきたいと考えています。
道のりは長いですが、インサイドセールスが本当の意味で「事業推進の中心である」という位置付けにしていくことが、私のやっていきたいことです。
終わりに
いかがだったでしょうか?
インサイドセールスと一口に言っても、企業規模や事業フェーズによって役割は全く異なります。
今回は私の実体験を元にインサイドセールスへの転職について書きましたが、他の職種でも同様のことが言えると思っています。
大手からスタートアップ、別の職種にチャレンジする転職をお考えの方は、ぜひご参考にしていただけると幸いです。