- 経験者が徹底解説 - 研究職の道を捨てて営業職を選んだ理由

はじめまして。
株式会社グローカルのシニアコンサルタント志村匠斗と申します。

私は、薬学の修士号を持っています。大学・大学院と薬学の研究を行い、国立の研究機関で数か月間研究に従事した経験があります。しかしながら、新卒で研究職ではなく営業職としてキャリアをスタートし、その後、事業企画、営業企画、マーケティング、インサイドセールスを経験し、現在は中小企業に対して経営コンサルティングを行う株式会社グローカルのシニアコンサルタントとして仕事をしております。

本記事では、研究職から営業職への転職を考えている方に向けて、

  • 研究職ではなく営業職を選んだ理由
  • 研究経験者から見た営業職の魅力
  • 営業職で活かせる研究職の経験

について、実体験を踏まえて紹介させていただきます。

なお、本記事の内容は、私の個人的な見解をまとめたものです。特定の企業や団体とは無関係であり、あくまでも研究職を経験した人間の意見であることを、あらかじめご理解いただけますと幸いです。

目次[非表示]

  1. 1.研究職を志した理由
  2. 2.研究職の道を捨てた理由
  3. 3.研究職ではなく営業職を選んだ理由
  4. 4.研究経験者から見た営業職の魅力
  5. 5.営業職で活かせる研究職の経験
  6. 6.営業職への就職や転職を考えている研究職の方へメッセージ

研究職を志した理由

まずはじめに、自己紹介を兼ねて、私が研究職を志した理由をご紹介させていただきます。

私が研究職の道を志したのは高校 2 年生の時です。
もともと化学に興味があり、化学を活かして人の役に立つ仕事として「薬剤師」を目指していました。しかしながら、小さいころからお世話になっている小児科医の先生にその旨を伝えたところ、「君は医者の下で働きたいのか」と問われ、考えが変わりました。
医師の処方箋ありきの仕事になる薬剤師よりも、自ら薬を生み出す研究者方が自身やりたいことに近いと考えるようになり、薬学の研究者を目指すようになりました。

薬学部に進学した時も、研究室配属が決まり本格的な研究がはじまった時も、その想いを持ち続けていました。いつか自分の手掛けた薬を市場に出し、自身の成果や価値を示したいと考えていました。私がいた東北大学は旧帝国大学ということもあり、研究活動が盛んな大学です。同級生や先輩の大部分は、大学院に進学した上で製薬企業や化学・食品・化粧品メーカー等の研究者やアカデミアの世界に進んでおり、自分も例にもれず同じ進路を辿るものだと考えていました。

研究職の道を捨てた理由

その後、私は研究職になることに疑いを持たないまま就職活動の時期を迎えました。転機は突然訪れるもので、この就職活動前後の出来事や経験が、私が研究職の道を捨てる理由に繋がっています。
ここでは、当時私がどのようなことを感じ、考えたのかを 3 つのポイントに分けて紹介します。

アカデミアの研究者の実態

1 つ目の理由は、 アカデミアの研究者の実態を知ったことです。

「高学歴ワーキングプア」と呼ばれるように、日本では博士号を取得したとはいえ、実入りのよい仕事に就ける限りません。特にアカデミアは非常に厳しい世界です。
博士号を取得してすぐに大学の助教授になれる研究者は極めて少なく、たいていの研究者は「ポスドク」と呼ばれる任期付きの研究職として研究室に残り、研究を続けることになります。ポスドクは非常に厳しい仕事です。任期中に何らかの成果を出すことが求められるのですが、研究室の学生を指導することを求められるなど、様々な雑務が発生します。また、収入も決して高くはなく、場合によっては生活のために副業を余儀なくされます。このような状況にもかかわらず、助教授になれるかどうかはポストの空き状況よります。任期があるからこそ、成果にコミットすることができる場合もあるのだろうとは思いますが、私個人としては、健全な精神状態で研究できないと思うほど厳しい環境に感じていました。

また、私は縁あって国立の研究機関で数か月間研究をする機会がありました。そこでは、高い能力や知識を持つにもかかわらず、 1 人の技術者として日々上司の研究を手伝っているベテランの研究者が複数在籍していました。

誇りを持って研究を続けてきた方たちが報われないという事実は、当時研究者になることに疑問を持たなかった私にとって大きな衝撃を与えました。社会人経験を持っていなかったからかもしれませんが、仕事として研究者を続けることの難しさをはじめて強く認識し、自分が研究者として生きていけるか不安になったことを覚えています。

研究職として何かを生み出すことの難しさ

2 つ目の理由は、研究職として何かを生み出すことの難しさを感じたためです。
これは、私が薬学部に在籍していたからこそ強く思っていることです。

薬学部の就職先の代表的なものとして、製薬会社があります。製薬会社は大きく分けて「医療用医薬品メーカー」「一般用医薬品メーカー」の 2 つがあります。医療用医薬品とは、医師の処方箋が必要となる医薬品のことで、私たちは自由に購入できません。一方で一般用医薬品は OTC( Over the Counter )医薬品とも呼ばれ、ドラッグストアなどで比較的自由に購入できる医薬品です。基本的に、医療用医薬品の方が上市までに様々な試験をクリアする必要があるため、様々な研究者が開発に携わります。そのため開発費は高くなりますが収益性も高く、医療用医薬品の研究者の方が給与水準が高くなります。
そして医療用医薬品メーカーの最大の使命は、これまでにない新薬を生み出すことです。新薬創出のハードルは極めて高く、医薬品になる可能性があるもの(シーズ)が、実際に新薬として市場出回るは、約 30,000 件 1 件の確率と言われています。

前述の通り、私はいつか自分の手掛けた薬を市場に出し、自身成果や価値を示したいと考えていました。仮に私が医療用医薬品メーカーに就職したとして、約 30 年間研究したとしても、新薬を生み出すことができないこともあり得ます。また、運よく新薬の開発に携わることができたとしても、関わる人の多さから、自分が手掛けた薬と言い切れないのではないかという懸念もありました。

これらから、私は医療用医薬品ではなく、一般用医薬品や化粧品の研究者に興味を持つようになりました。一般用医薬品や化粧品は、商品開発のサイクルが短く、ひとつの製品に携わる人数が少なくなるため、より自分効力感を感じやすいのではないかと考えたためです。この考えは間違いではなかったのですが、新たな問題が浮上します。

研究職に求められる行動

3 つ目の理由は、研究職に求められる行動が、私の思い描く研究者像と違ったためです。

就職活動では、一般用医薬品メーカーと化粧品メーカーの研究職を中心に選考を受けました。決して上手くいったとは言えないのですが、ありがたいことに数社の有名一般医薬品メーカーと役員面接の機会をいただくことができました。役員面接では、私が高校生のころから抱いてきた「いつか自分の手掛けた製品を市場に出したい」という想いを伝えました。しかしながら、役員の方々の反応は芳しくありません。「君は研究者っぽくない」。これが、全ての役員面接で言われたお見送りの言葉でした。

ここからは私の考察を踏まえた整理です。
結論としては、私が目指していたのは Researcher (研究者)でなく、 Engineer (モノを創る人)だったということです。研究を意味する Research には、探す( Search )という言葉が含まれます。未だ見つかっていない原理・機能・物質などを「探す」ことが研究者に求められる役割であり、役員面接を担っていた役員の方々が私に求めたかった行動です。にもかかわらず、私が役員の方々に伝えたのは「モノを創る」ことに対する強い想いです。研究者ではなく、商品開発がしたいと言っているようなものです。だからこそ、「君は研究者っぽくない」という発言に繋がります。言い換えれば、「君は商品開発の方が良いのではないか」というメッセージだったのかもしれません。

修士 2 年となった 4 月になってはじめて現実を突きつけられた気がしました。このときから、改めて「自分がやりたいこととは何か」を考えるようになりました。

研究職ではなく営業職を選んだ理由

研究職としての就職活動を見直すことになった私は、改めてこれまでの人生を振り返ることになります。自分の可能性を探るために、 IT エンジニアやクリエイターなど様々な職種の面接を受けたりしました。最終的に営業職が一番自分の実現したいことを叶えられるという考えにいたります。その理由は以下の 3 点です。

  • モノだけが成果の表現ではない
  • 使う側に立たなければ変えられない
  • 研究バックグラウンドを持つだけで希少性が高い

1 つ目の理由である「モノだけが成果の表現ではない」は、就職活動を通じて自分自身の考え方が変わったことがきっかけになっています。
薬学の研究を通して、何らかの製品を世に出すことこそが、自分の価値の表現方法だと信じて疑わなかったのですが、モノではなく、事業やサービス、自分自身の存在そのものであっても、自分の価値表現方法だと考えるようになりました。これまでの自分は有形のモノに理由なくこだわっていたことに気付いてからは、究極的には「自分自身」も商品になり得ると考えを改め、どのような仕事であっも自分価値を表現できる可能性があると思うようになりました。

2 つ目の理由である「使う側に立たなければ変えられない」というのは、研究職の立場に対する否定的な見方です。
企業の研究者は、企業の方針に従って研究を行います。どれだけ研究開発に力を入れている企業であっても、企業の方針に背くような研究は認められません。そして、その方針を決めるのは経営者です。もちろん、研究職や技術職のバックグラウンドを持った経営者もいるのですが、研究に理解のない経営者も多く存在します。特に製造業において研究職や技術職は花形の仕事です。新しい価値を生み出しているという自負も強く持っていることでしょう。そして彼らから見れば、営業職は自分たちが生み出した価値をお金に変える手伝いをしているに過ぎないと感じ、十分な敬意を払わないこともあるかもしれません。
しかしながら、研究者や技術者も経営者から使われる側の立場の域をでません。だからこそ、研究者や技術者に留まっていては、自分がやりたいことができないのではないかという不安がありました。最初は営業職という立場で、研究者や技術者にこき使われるとしても、様々な経験を通してビジネスを学び、いつか研究者や技術者を動かす立場になればよい、と考えるようになりました。

3 つ目の理由は「研究バックグラウンドを持つだけで希少性が高い」ことです。
今でこそ理系の文系就職は珍しくないですが、私が就活をしていたころは、不思議に思われることが多かったです。特に、薬学部は就職先が限定的であることから、全く関係のない業界に飛び込む方が少なく、とても目立ちます。だからこそ、この希少性は私の強い武器になると予想していました。仕事で活きることは少ないかもしれませんが、周りが持っていない特殊な専門性を持つことは、自分のチャンスを広げる可能性もあります。研究の道に進まなければ研究経験は無意味になるという考えではなく、研究経験を意味のあるものするため試行錯誤すればいいという考えに転換したことで、私の中から迷いが消えました。

その後の就職活動では、人材や広告業界、製造業の営業職として内定を頂くことができました。そして、自分自身の希少性を高く評価してくださった人材業界に就職を決めています。

研究経験者から見た営業職の魅力

よく、営業職は厳しく大変な仕事と言われます。私も同級生から「なぜわざわざハードな営業職にしたのか」と聞かれることが多くありました。確かに厳しい環境ではあるのですが、研究を経験していたからこそ、魅力やおもしろさを感じることも多くありました。ここからは、実際に営業職として仕事をし始めたときに感じた営業職の魅力について紹介します。

PDCA サイクルの早さ

1 つ目は PDCA サイクルの早さです。

営業職の唯一にして最大のミッションは利益獲得です。そのために、営業職は日々試行錯誤をして顧客に提案をします。行動や実績など、常に定量的・定性的に評価されるため、毎日 PDCA サイクルを回すことになります。この早さは研究職ではなかなか体験できないことだと考えています。

もちろん研究職も試行錯誤を繰り返して真理を探求する仕事であるため、 PDCA サイクルを回す仕事です。ただ、研究の場合は再現性があるかも重要な観点であるため、 1 度上手くいったからといって次に進めるわけではありません。必ず複数回の再現実験を行い、再現性を確認したうえで次に進みます。数日、数週間かかる実験や検証もあるため、自分がどれだけ確信をしていても、その場に留まっていなければならない瞬間は発生してしまいます。

営業職も再現性を意識することはあるのですが、行動や転換の早さが重視されることが多い印象を受けます。立ち止まるよりも走りながら考える、とにかくPDCAを早く回してより良い成果をつくるというのは、営業職の魅力だと感じます。

実力主義や成果主義の環境

2 つ目は実力主義や成果主義の環境です。

営業職は良くも悪くも評価が単純明快です。どのようなプロセスであっても、最終的に目標売上(予算)を達成すれば評価を得ることができます。経験年数や専門性といった営業個人ではどうにもならない要素があっても、行動量や顧客との関係性といった営業個人の努力で解決できる要素も多くあります。未経験であっても何とかなることが多いのです。成果が出るまでは苦労も多いのですが、しがらみを感じることなく仕事でき、ちゃんと評価付いてくるのは、研究よりも納得感を持って仕事ができる環境だと思います。

自分なりの論理を組み立てられる

3 つ目は自分なりの論理を組み立てられることです。

研究の場合、自分の成果を論理的に説明する手段として論文執筆があります。論文は大量の先行研究を調べ、引用して書き上げる必要がありますが、非常に面倒で手間のかかるものです。対して、営業は先人や有識者の知見こそあれど、営業自ら勝ちパターンを構築して仕事ができ、良い意味で過去に縛られません。また、論理の科学的な正しさよりも、成果が重視されるため、行動を通して実証すればいいと割り切ることができます
研究経験者から見ればこのシンプルさに感動を覚えます。思い悩むことなく前に進みながら自らの手と足と頭で検証すればいいと割り切れることが、営業職の魅力だと思います。

営業職で活かせる研究職の経験

最後に、営業職で活かせる研究職の経験についてまとめます。自身の実体験の他、数々の転職を支援したり、仕事を通して研究職の経験が活かせそうなものをピックアップして紹介します。

自身の専門性

1 つ目は、自身の専門性です。

特定の領域に対して、深い理解を持つことで、社内外の人間から信頼を得ることができます。特に、技術者や研究者を相手に営業をする場合、共通言語が多いことはコミュニケーションのスピードを上げ、商談をスムーズに進めることにも繋がります。また、専門性を持つからこそ、新しいトレンドをキャッチアップするために必要な労力も少なく済みます
専門性頼りの営業では限界があるものの、自身の強みとして十分武器になるため、研究職の経験を持っていて良かったと感じる大きな要素といえます。

事務処理能力

2 つ目は、事務処理能力です。

研究活動では、データ分析や報告資料のまとめをする機会が多くあるため、日常的に Excel や PowerPoint などの Office ソフトを使用します。これらのツールを抵抗感無く使用することができるも、研究職経験者の強みといえます。また、 Excel では様々な関数を駆使したり、マクロを組んでデータ集計を効率化した経験をもつ方もいるでしょう。研究室のミーティングや学会の発表などで PowerPoint を使ってプレゼンテーション資料をつくった経験がある方も多いと思います。これらのノウハウや経験も営業現場で大いに役立つ可能性があります

分析能力

3 つ目は、分析能力です。

営業では、より効率良く利益を出すために、戦略や方針を立てることが多くあります。その際、過去の実績や市場の情報をまとめて分析を行います。様々なデータから、傾向値を見出したり、注目すべきポイントを見つけて追加で検証をしていくのは、研究開発現場のルーティンワークですが、この経験は営業戦略の立案や行動分析に大いに役立ちます
残念なことに、仮説を検証したり改善の意識を強く持つ営業は多くありません。あなたの分析結果で、組織の行動が見直され、効率的な営業活動に繋がっていけば、営業組織における貴方の価値は高まります。

営業職への就職や転職を考えている研究職の方へメッセージ

本記事では、私の実体験を踏まえて、研究職から営業職にキャリアチェンジをする実情をお伝えしました。

これまでの研究経験を捨てることに負い目を感じている方もいるかもしれませんが、捨てるかどうかはあなたのこれからの行動次第です。営業職としてゼロから学ばなければならないことがある一方で、研究経験を持つからこそ、営業職でキャリアを重ねた人にはない強みを発揮することも可能です。

本記事が皆さんの転職や就職活動にとって有益なヒントになっていれば幸いです。

著者 株式会社グローカル/志村 匠斗
著者 株式会社グローカル/志村 匠斗
東北大学大学院薬学研究科修了。 大手人材企業の法人営業としてグローバル企業から町工場まで100社以上の採用支援を行う。その後WEB系スタートアップ企業に転職し、事業企画・営業企画・マーケティングに携わる。現在は中小企業の経営コンサルティングを行う株式会社グローカルにてシニアコンサルタントを務める。

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