未経験からカスタマーサクセスへのチャレンジでおさえるべきこと
BtoB SaaS企業2社にてカスタマーサクセスを約4年間経験したT.Fと申します。
現在はカスタマーサクセス部で培った「顧客視点」をもとにマーケティング部のカスタマーマーケティンググループに所属し、既存顧客向けの企画立案やオンラインコミュニティ立ち上げに向けて日々奮闘しております!
本記事では
- カスタマーサクセスに興味を持っている人
- これからカスタマーサクセスにチャレンジしたい人
- カスタマーサクセスの業務を始めたばかりの人
に向けて、実際のカスタマーサクセスの仕事内容や業務を進めるうえで大切にしてほしいマインド、スキルについて解説していきます。
この記事を読んでいただくことで、カスタマーサクセスの仕事のイメージが湧き、「カスタマーサクセスって楽しそう!」「明日からの業務でも活かしてみよう!」と思える方が一人でも増えたら嬉しいです。
目次[非表示]
カスタマーサクセスとは
まずはカスタマーサクセスの業務内容についてWho、What、Whyの3つの観点に分けて説明します。
Who |
サービス・ツールご契約後の顧客に対して |
What |
顧客が成し遂げたい目的、事業ゴールを踏まえた上で、そのサービス・ツールの導入立ち上げ、活用定着、契約更新、拡大提案までの一連の顧客体験を設計 |
Why |
顧客の事業・ビジネスの成功のため |
Who:サービス・ツールご契約後の顧客に対して
一般的にカスタマーサクセスは、いわゆる「新規営業」はしません。
見込み顧客に対しての商品・サービスの提案活動ではなく、サービス・ツールご契約後の顧客や既に自社と取引のある顧客が対象となります。ですので、ルート営業や深耕営業の業務についてご経験のある方はイメージが湧きやすいかもしれません。顧客との継続的な関係構築スキルが必要となるのがカスタマーサクセスです。
What:顧客が成し遂げたい目的、事業ゴールを踏まえた上で、そのサービス・ツールの導入立ち上げ、活用定着、契約更新、拡大提案までの一連の顧客体験を設計
顧客が自社サービス・ツールの契約をした後の工程を担うのがカスタマーサクセスのメインの仕事です。少し話が横にそれますが、現代の社会では、モノを所有する時代からモノを自身の必要な時に必要な量だけ利用する時代に変わりつつあります。これがいわゆるサブスクリプションの時代です。
例えば、身体を鍛えるために通うジムもサブスクリプションサービスの1つと言えます。皆さんにも少し想像してほしいのですが、ジムに通うと決めた時は「ダイエットするために!」「筋肉質な身体にするために!」というように目的があって、ジムへの入会手続きをして、ジムを運営する会社と契約をすると思います。その後、あなたは頑張ってジムに通って身体を鍛えたり、時にはサボってしまったりします。その結果、入会当初に掲げたジムに通う目的がなかなか達成されなかった時、あなたは今後もジムに通い続けますでしょうか。おそらくジムとの契約を解除するという選択をする人も一定いるのではないでしょうか。なぜなら、あなたが実現したかった目的が叶わなかったからです。
少し回りくどい話になりましたが、私がこの話で伝えたかったことは、サブスクリプション時代において、「契約=ゴール」ではなく「契約=ゴールを達成するためのスタートラインに立った」ということです。単なるモノ売りで終わらずに、ゴールを達成するためにどのような体験・プロセスを顧客に経験してもらう必要があるのか、その一連の体験を設計するのがカスタマーサクセスの役目です。
Why:顧客の事業・ビジネスの成功のため
カスタマーサクセスという言葉の通り、「顧客の成功」のために日々の仕事を進めます。それでは「顧客の成功」とは何でしょうか。Whatの部分でも少しお伝えしましたが、カスタマーサクセスのミッションは「顧客が成し遂げたいゴールの実現」です。なので、顧客の事業を誰よりも理解し、目指すべきゴールの実現に向けて必要なサポートをする必要があります。顧客の成功=「顧客が成し遂げたいゴールの実現、その結果顧客のビジネスが成長する」と考えると、「顧客の成功」とは何かのイメージも湧いてきたのではないでしょうか。例えば、ある会社にとっては「売上アップ」が成し遂げたいゴール、ある会社にとっては「生産性向上により、残業時間の短縮」が成し遂げたいゴールかもしれません。
ここで1つ補足ですが、「カスタマーサクセス=顧客の御用聞き、ボランティア」ということではないです。顧客の成功のために何でも無償でサポートするとなれば、自社のビジネスはどうなりますでしょうか。おそらく自社のビジネスが成長することは難しいでしょう。顧客の成功を追求した結果、自社のビジネスも結果的に成長するというのが理想です。具体的に言うと、顧客の成功のために追加のサービス・サポートが必要なのであれば、顧客に積極的に提案することもカスタマーサクセスの業務では求められる場合もあります。このあたりについては、この後のカスタマーサクセスの仕事内容で詳しく解説します。
いずれにせよ、顧客の成功と自社の成功の両輪を回し続けることがカスタマーサクセスの最大のミッション、かつ仕事の醍醐味です。
カスタマーサクセスの仕事内容
上記で説明したWhatについてもう少し詳しく解説していきます。
「そのサービス・ツールの導入立ち上げ、活用定着、契約更新、拡大提案までの一連の顧客体験」を設計するのがカスタマーサクセスの業務とお伝えしましたが、①導入立ち上げ、②活用定着、③契約更新、④拡大提案、これらの4つの領域を踏まえて、チーム編成をしたり、業務を分担する企業もあります。私は2社でカスタマーサクセスを経験しましたが、1社目はすべての領域を一人で担う、2社目は2つのチームに分かれて、分業をしていました。
どちらが良い悪いということではなく、カスタマーサクセスの業務はそれだけ守備範囲が広いということです。ここでお伝えした4つの領域についてもう少し詳しくお伝えします。
①導入立ち上げ(オンボーディング)
サービス・ツールの契約後はまず立ち上げ支援をします。SaaS業界では導入立ち上げのことを、オンボーディングと呼ぶこともあります。なので、導入立ち上げの支援をするチームのことも「オンボーディングチーム」と呼んだりもします。このオンボーディング領域で具体的に何をするかと言いますと、
- サービス・ツール導入における目的の言語化、目標設定
- 目的を達成するための計画立案
- (導入するのがツールの場合)該当ツールの操作方法のレクチャーなど
になります。
運用の立ち上げ期の体験がその後の顧客のツールの活用度合いを決めると言っても過言ではないくらい非常に重要な場面となります。立ち上げ期に絶対にやったほうが良いこと、妥協してはいけないことは、今回のツール導入における目的の明確化です。
「このツールを活用して、どんなことを成し遂げたいのか」については顧客と何度もすり合わせをするべきです。たとえ、提案段階で自社の営業担当と顧客の双方で話し合って、目的が決まっていたとしても、再度この点についてはヒアリングをして、「どうしてこの目的を達成したいのか」について確認することをおすすめします。ここまでしつこく言う理由としては、ツールの導入目的が今後どのようにツールを活用するかを決めるスタート地点になるためです。
先ほどのジムの例で説明すると、
- ダイエットをするため
- 筋肉質な身体にするため
という目的例を列挙しましたが、どちらの目的に重きを置くかでこれからするトレーニング内容も大きく変わるはずです。ランニング多めにする、ウエイトトレーニング多めにする等の手段は、あなたが最終的に成し遂げたい目的によって変わるはずです。なので、カスタマーサクセスのオンボーディングにおいても、最初の導入目的の明確化が非常に重要になります。
②活用定着(アダプション)
ツールの導入立ち上げの時期が終わり、一定のツール活用や導入目的が実現しそうと実感できた後の段階がツールの活用定着になります。この段階では本格的にツールを活用し、定着を目指します。ジムの例で言うと、ジムに通い身体を鍛え続けられるように習慣化を目指す段階です。この段階をアダプションと一般的に呼ぶことが多いです。アダプションではツールの活用定着を目指すので、そのツールの利用率などのデータをもとに「顧客の成功」のための支援を行うことも多いです。また、活用定着に向けてどのような活用方法が顧客に合っているかを確認する段階でもあるので、ツール活用のPDCAサイクルを回しながら、顧客にとっての最適な活用方法を見つけることで、導入目的の実現に貢献していきます。
③契約更新(リニューアル)
活用定着の段階も乗り越えて、次の段階は契約更新になります。このツールを今後も活用し続けるのかを顧客が意思決定するタイミングで、意思決定に向けたサポートをするのがリニューアルの段階です。「今年1年間のツール活用の成果を取締役会で上申する必要があるから、ツール活用についてのデータがほしい」という要望を私も実際にいただいたことがあり、顧客が意思決定しやすいように要望に応えていくこともあります。
とはいえ、①オンボーディングと②アダプションが上手く進まなかった場合、リニューアルで顧客がそのサービスを継続して利用すると意思決定することは多くないということは想像しやすいと思います。ですので、①と②の段階でどれだけ顧客体験を充実させておくか、「今後もツールを活用し続けたほうが良い」ということをどれだけ顧客に実感させることができるかが非常に重要になります。それでは、顧客はどうやって今後もツールを活用し続けたほうが良いか判断するのでしょうか。
ここで重要になるのが、導入目的になります。当初掲げていた目的は達成されているのかどうか、ということです。仮に導入目的が明確になっておらず「あれ、結局何のためにこのツールを活用していたのかな?」と顧客が考えてしまう状況になってしまうと、形勢逆転のチャンスは無いに等しい状況なのでこのケースは最も避けたいです。リニューアルの段階でしっかりと意思決定をしてもらうためにも、オンボーディングの時に導入目的を明確にすることが何よりも大事なのです。
④拡大提案(エクスパンション)
顧客が掲げていた目的をいち早く達成するために、追加のサポートやオプションのサービスを購入いただいたほうが良い場面があります。これもジムの例で説明すると、「3か月後までに必ず5キロ痩せる必要がある」と目標を掲げている人がいるとします。しかし、現状のままだとその人が目標を達成するのは難しいとあなたは感じています。かつ、達成しなければその人はジムを3か月後に退会する可能性も非常に高いです。このような場面の時に、あなたがとるべき行動は、目標の実現のためにどのような手段が残されているのかを検討し、顧客に提案する必要があります。
例えば、有償のサービスになるが、パーソナルトレーナーによる個別レッスンの提案をするという手段もあります。有償のサービスになるので顧客にとってはコストが膨らみなかなか決断しづらい部分もありますが、その顧客の担当であるあなたは既存営業として、しっかりとそのサービスの価値を訴求し提案を受け入れてもらえるように顧客を説得する必要があります。
カスタマーサクセスは新規営業はしないですが、このような形で既存営業をすることも多くあります。しかし、カスタマーサクセスがどこまでの守備範囲を担うのか、アダプションまでなのか、それともエクスパンションも担うのかという点については各社にて方針があるので、転職する前などに「御社のカスタマーサクセスの守備範囲はどこまでですか?」と確認をすることをおすすめします。
このようにカスタマーサクセスの仕事内容を解説してきましたが、皆さんもお分かりの通りカスタマーサクセスの守備範囲はかなり広いです。そして、各メンバーの得意、不得意で任せられる守備範囲も限られるという話も正直あります。私の場合、オンボーディングやアダプションについては一定の自信はありましたが、提案活動や交渉の進め方などのセンスがなく苦手だったのでリニューアルやエクスパンションの活動についてはあまり向いていなかったという背景もあります。なので、自分自身の得意分野や志向性などを踏まえたうえで、どの文脈でカスタマーサクセスをしたいのかを考えてみるのも非常に良い機会になると私自身の経験からもそのように思います。
カスタマーサクセスに求められるスキル
前提として、上記で説明したようにカスタマーサクセスが担う守備範囲は非常に広いです。そのため、自分自身が担う領域によって求められるスキルも当然異なります。そのような前提がある中、これまでの私の経験も踏まえたうえで、個人的にこれは絶対に必要だというスキルをあえて一つだけ言うと、それはプロジェクトを推進させる力、です。
これが何なのかを伝えるために、たとえ話を用意しているのでまた皆さんにも少し想像してほしいです。
あなたはあるツールを導入することを決めたプロジェクトメンバーの一人で、そのツールの運用担当を任されました。しかし、あなたはもともとある自分自身のタスクを消化することで精一杯で、このプロジェクトのタスクも進めるのが非常に大変な状況です。このような状況の中で、あなたはツールの運用担当としてツールを積極的に活用したいと思いますか?
おそらく答えはNoだと思います。自分自身のタスクを消化するのも大変なのに、ツールの運用担当としての業務もアドオンされていて、工数もかなり厳しいです。それに加えて、ツール運用担当としてのタスクの優先順位は低くなり、一向にツール活用は進まなくなります。そして、ツールの契約更新はせずに解約。。というケースです。
このような状況に陥ってしまう顧客、プロジェクトを私は何度も見てきました。それもそのはずです。顧客目線で言うと、通常業務に加えて、このようなツール導入の仕事がアドオンされる場合が非常に多いので、「また仕事が増えてしまった」と思われることが多いです。
なので、その中でも私が大切にしていたことは、顧客担当として何が何でもプロジェクトを推進させるという強いマインドでした。その強いマインドを持って、「今回のツール導入の目的は、○○の実現です、このツールを活用することで皆さんの業務に好影響があります。」と顧客に伝え続けて、プロジェクトを少しずつでも良いので前へと推進させました。その結果、徐々に徐々に「顧客の成功」に近づき、顧客にも満足していただく結果を出すこともできました。
業界知識、ロジカルシンキング、クリティカルシンキングなどももちろんカスタマーサクセスの仕事を進めるにあたって非常に大事ですが、これらのスキルも、プロジェクトを推進させるために必要という位置づけで、どのカスタマーサクセスの文脈においても「顧客の成功のため」という考えは求められるので、顧客の事業・ビジネスが成長するためのプロジェクト推進力がカスタマーサクセスには求められていると考えております。
本記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました!
本記事が、あなたの転職活動や今後のキャリアに少しでも役立てましたら幸いです。