「とりあえずインサイドセールス」は危険?インサイドセールスの求人のチェックポイント7選
営業未経験者の方々にとって、「インサイドセールス」は営業職への第一歩として人気のある選択肢の1つです。その背景には、営業活動の効率化や育成の観点から「営業の分業化が進んでいる」という世の中のトレンドがあります。これにより”一人前”のハードルが下がったため門戸が広く開かれてきています。
しかし、安易にインサイドセールスを選ぶのは危険です。インサイドセールスは企業やチームによって役割や求められるスキルが大きく異なります。このコラムでは、インサイドセールスに挑戦する際に知っておくべきポイントや求人選びの注意点を具体的に解説します。未経験者でも安心してスタートできるよう、実践的なアドバイスを提供します。
著者 プロフィール | |
株式会社セレブリックス 木下 昌洋 |
静岡大学 人文学部(現 人文社会科学部)卒業。 |
目次[非表示]
- 1.インサイドセールスとは
- 2.「とりあえずインサイドセールス」は危険?
- 3.インサイドセールスの求人のチェックポイント7選
- 3.1.1.扱う商材は何か、何種類か
- 3.2.2.新規営業か既存営業か
- 3.3.3.プル型かプッシュ型か
- 3.4.4.業務範囲
- 3.5.5.目標指標(KGI、KPI)の確認
- 3.6.6.営業環境の確認
- 3.7.7.「一人前」になるための支援やサポート
- 3.7.1.新人研修や継続的なトレーニング
- 3.7.2.メンター制度やサポート体制
- 4.まとめ
インサイドセールスとは
インサイドセールスとは、電話やメールなどで、見込み顧客を獲得したり、アポイント=商談機会を獲得したりすることをミッションとしている営業活動です。
インサイドセールスの他にもSaaS業界の営業職でよく耳にするフィールドセールスは、直接対面での訪問やWEB会議形式での商談を行います。製品やサービスの提案、デモンストレーション、契約交渉などを行います。つまり、フィールドセールスにアポイントをパスするのがインサイドセールスの主な役割です。
「とりあえずインサイドセールス」は危険?
実際にインサイドセールスの求人を見てみると、「営業未経験でも歓迎」ということが多いです。しかし、「とりあえずインサイドセールス」という安易な考え方は危険です。その理由は、インサイドセールスと一言で言っても、各組織やチームでの役割やミッションに大きな違いがあるからです。(もちろん、リーダーやマネージャーとして、またはその候補として経験者を求めている求人もあります。)
例えば、扱う商材の種類や使用するツール、プッシュ型/プル型、チームの目標指標(KGI、KPI)など、企業ごとに求められる役割やミッションが異なります。そのため、インサイドセールスに挑戦する際には、求人情報を詳細に確認し、自分に合った環境を選ぶことが重要です。自分のキャリア目標やスキルセットに合った役割を見つけることで、長期的な成功と成長を実現することができます。
次のセクションでは、求人選びの際に押さえておくべき具体的なチェックポイントについてさらに詳しく解説します。
インサイドセールスの求人のチェックポイント7選
1.扱う商材は何か、何種類か
2.新規営業か既存営業か
3.プル型かプッシュ型か
4.業務範囲
5.目標指標(KGI、KPI)の確認
6.営業環境の確認
7.「一人前」になるための支援やサポート
1.扱う商材は何か、何種類か
インサイドセールスとしてだけでなく、営業職として「何を売るか」は非常に重要なポイントかと思います。そして、実際に「何を売るか」によって、転職後に身につけられるスキルや専門性に大きな違いが出てきます。
例えば、ITソリューションや高度な技術製品を扱う場合、専門知識や技術的な理解が求められ、専門性を高めるチャンスがあります。一方、日用品や消耗品などの商材を扱う場合、迅速な販売サイクルと多くの顧客対応が求められ、コミュニケーションスキルが重要となります。
単一商材を扱う場合、特定の製品やサービスに関する深い知識と専門性を身につけることができます。これにより、製品の専門家としてのポジションを確立しやすくなります。
他方で、提案力をつけたい、顧客の課題に合わせて様々なソリューションを提案したい場合、複数商材を扱う環境が適しています。複数の商材を扱うことで、顧客の多様なニーズに対応できる柔軟性が求められます。また、単一商材でもさまざまな提案の仕方がある場合も多いため、求人情報では「何を売るか」をチェックし、その上で自分のキャリア目標やスキルに合っているかをしっかりと見極めることが大切です。
2.新規営業か既存営業か
インサイドセールスの求人をチェックする際には、新規営業か既存営業かを確認することが重要です。それぞれのスタイルには異なる役割とスキルセットが求められます。
新規営業は、新規の受注や契約の獲得を目指す役割です。新しい顧客との関係構築が主な業務となり、高い関係構築力が必要です。また、限られた時間の中で重要な顧客情報を引き出すヒアリング力も求められます。挑戦的な環境でスキルを磨きたい人に適しています。
一方、既存営業は既存の取引先企業に対して、別の商材を提案することでさらなる売上アップを目指します。すでに取引があるため、コミュニケーションのハードルが低く、提案力や顧客のニーズを深く理解するスキルが重要です。また、休眠顧客の掘り起こしを行うこともあります。新規開拓を行う新規営業と比較すると聞きなじみがない方もいるかもしれませんが、重要な役割です。
新規営業は関係構築力やヒアリング力を身につけるチャンスが多く、既存営業はより高度な提案力を求められます。求人情報を確認し、自分のキャリア目標やスキルに最も合った営業スタイルを選ぶことが大切です。
3.プル型かプッシュ型か
先ほどの”新規開拓”はさらに”プル型かプッシュ型”かの活動に分類されます。両方担うチームもあります。
プッシュ型は、新規開拓、BDR、アウトバウンド営業など呼び名が複数ありますが、今まで接点のなかった企業との取引を始めるために営業側からアプローチを行う活動を指します。手法は電話や問い合わせフォーム、手紙などさまざまな手法を組み合わせてキーパーソンとの接触を図ります。
プッシュ型では自社のサービスを知らない人へのアプローチが多くなるため、トーク力が必要とされるのはもちろんですが、それ以上に”探客=ターゲティング”が成果に影響があると言われています。つまり、「自社サービスに興味を持ってくれる確率の高い企業はどんな特徴があるか」という”当たりを付ける”ことで営業成果が大きく上がっていきます。
また、プッシュ型営業はプル型と比べて断れる回数が圧倒的に多かったり、行動力が求められたりする傾向があるため、しっかりと成果を出せれば、さらにその次のキャリアアップのキップ=実力や成果の証明 として強力なアピール材料となります。
その対比として、プル型はSDR、インバウンド営業、問い合わせ対応、などとも呼ばれ、問い合わせや資料ダウンロードなど相手からのアクションに対して営業活動を展開していきます。 プッシュ型ではキーパーソンの情報がない中での営業活動となりますが、プル型ではリードと呼ばれる見込み顧客の名前や連絡先の情報があることがほとんどであるというのが大きな違いです。
プル型は、もともと顧客が何かしらの興味を持っている状態から始まることが多いため、プッシュ型と比べてアポイント獲得率は高い傾向にあります。一方で、お問い合わせの背景や相手の検討度合いなど、状況がさまざまなため会話を通じて見極めていくヒアリング技術や相手への想像力といったスキルが必要です。
4.業務範囲
インサイドセールスの業務範囲は企業によって異なり、主に「アポイント獲得まで」を担当するチームと、「オンライン商談を行い、検討フェーズを上げた上で商談担当にトスする」チームに大きく分かれます。筆者の肌感覚ではありますが、求人の割合としては前者のケースが9割以上です。
オンライン商談を行うチームでは、電話やメールでのコミュニケーションの他にも、プレゼンテーションスキルやデジタルツールの活用能力が必要です。
特に、今後フィールドセールスにもチャレンジしたいという意向がある場合、オンライン商談を行う業務は次のステップに繋がりやすいです。オンラインでの商談はより深い顧客理解と細やかなフォローアップが求められるため、フィールドセールスの準備として有益です。
他にも、組織によってはメールマーケティングつまり、メールを使ったリードナーチャリング(顧客育成)や、SNS運用やウェビナーの企画・運営など、マーケティング領域とも言える部分をインサイドセールスが担うこともあります。
自分のスキルセットやキャリア目標に合った業務範囲を選ぶことで、効果的にキャリアを築くことができます。求人情報を詳細に確認し、自分に最適な業務範囲を見極めることが成功の鍵となります。
5.目標指標(KGI、KPI)の確認
インサイドセールスの求人を確認する際、目標指標(KGI、KPI)が何かを理解することは非常に重要です。企業によってはアポイントの数を重視する場合もあれば、有効商談化率や受注率を重視する場合もあります。
アポイント数を重視する企業は、質より量を重視する傾向が強いです。もちろん「ただアポイントを取ればいい」という訳ではないですが、目先の数字へのコミットメントを求められるケースが多いです。
一方、有効商談化率や受注率を重視する企業では、アポイント後の商談の質や顧客との関係構築が重要視されます。このような企業は、インサイドセールス(IS)とフィールドセールス(FS)がしっかりと連携している可能性が高いです。
また、有効商談化率や受注率を重視する企業では、自分の獲得したアポイントがどうなったのか、フィードバックをもらう機会が多く、手触り感や貢献実感をより感じることができます。これにより、業務の成果が見えやすくなり、モチベーションを高める要因となります。
どちらがいいのか悪いのかを論じたい訳ではなく、企業文化にもよるので、ご自身のスタイルやフィットしやすいか、が大事だと思います。ただ、この部分は求人には書いていないケースも多いので、面接の場で積極的に質問して確認していくことをおすすめします。
6.営業環境の確認
インサイドセールスの求人を確認する際には、使用されている営業支援ツール(SFA)や顧客管理システム(CRM)の種類を把握することが重要です。これらのツールは営業活動の効率化に大きく関わってきます。例えば、SalesforceやHubSpotなどのツールが使われている企業では、データ管理や顧客追跡がスムーズに行え、営業プロセスの最適化が期待できます。
また、企業データベースの利用の有無も確認すべきポイントです。企業データベースを活用することで、顧客情報を一元管理し、ターゲット顧客の絞り込みやリードナーチャリングが効果的に行えます。データベースの充実度は営業の効率化に直結し、ターゲティングの精度向上にも繋がります。
さらに、営業環境においてデータ活用度合いも大きく異なります。営業活動の成果をデータとして収集・分析し、その結果を基に戦略を立てることで、より効果的なアプローチが可能になります。データドリブンな営業は、結果を可視化しやすく、改善点を明確にするため、成長の機会が多いです。
これらの要素を求人情報で確認することで、自分にとって最適な営業環境を見極めることができます。効果的にデータを活用し、業務を効率化することで、成果を上げやすい環境を選びましょう。求人情報には詳細まで記載されていないこともあるので、実際に面接の場で聞いてみるのもひとつの手でしょう。
ただし、これらの環境が整っていないからと言って、安易に避けるのも違います。あえて「まだ整っていない環境」に入ることで、組織や仕組みを作っていく経験をすることもできます。このような環境では、自身がツールやシステムの導入・改善に関与し、組織の成長に貢献する機会が得られます。
7.「一人前」になるための支援やサポート
インサイドセールスの求人を確認する際には、新人研修や一人前になるための支援体制が整っているかを確認することも重要です。これには、新人研修や継続的なトレーニングの有無、メンター制度やサポート体制が含まれます。
新人研修や継続的なトレーニング
新人研修がしっかりと行われる企業では、基本的なスキルや知識を習得する機会が提供されます。また、継続的なトレーニングがあることで、最新の業界トレンドや技術に対応する能力を維持・向上させることができます。求人情報や面接では、研修プログラムの内容や頻度について確認すると良いでしょう。
メンター制度やサポート体制
メンター制度がある企業では、経験豊富な先輩社員が新人をサポートし、実務でのアドバイスやフィードバックを提供してくれます。これは、新人が業務に早く適応し、自信を持って仕事に取り組むために非常に有効です。さらに、サポート体制が整っている企業では、困った時に相談できる環境があり、業務上のストレスを軽減する助けとなります。
求人情報や面接でこれらの支援体制について確認することで、自分に合った職場環境を見つけやすくなります。しっかりとした支援体制がある企業を選ぶことで、安心して新しい環境に飛び込むことができるでしょう。
まとめ
インサイドセールスに挑戦する前に、確認すべきポイントをしっかりと押さえることが重要です。求人情報に書かれていないことも多いため、その際は転職エージェントや面接官に質問しましょう。このコラムで紹介したポイントを再確認し、自分のキャリア目標に合った企業を選ぶことが、転職活動の成功につながります。
このコラムがみなさんの転職活動やキャリア形成の一助になれば幸いです。