- 経験者が徹底解説 - 営業職からのキャリアチェンジで留意すべきポイント
株式会社グローカルのシニアコンサルタント志村匠斗と申します。
営業職は、日々予算を追いかけ、成果を出すために努力をする仕事です。日々の仕事にやりがいは感じていても、このまま営業職として仕事を続けていけるのか不安に思うことがあるかもしれません。
「営業職に興味はあるが、ずっと営業職のままは嫌だ」
「成長企業に転職したいが、営業職の経験しか持っていない」
「いつか企画系の仕事に就きたいが、どんな準備をすればいいのかわからない」
本記事では、上記のようなお悩みを抱えている営業職志望の方や、すでに営業職として働かれている方に向けて、
- 営業からのキャリアチェンジに必要な考え方
- 営業からのキャリアチェンジの種類
- 転職を有利に進める営業経験の捉え方
を実体験を踏まえて紹介させていただきます。
本記事があなたにとって転職活動を良いものにする参考情報となれば幸いです。
自己紹介
まずは自己紹介をさせてください。
なお、少し長くなるため、興味がなければ読み飛ばしていただいて構いません。
私のキャリア
私は、新卒で営業職を経験し、2回の転職を通して、営業企画、事業企画、インサイドセールス、マーケティング、経営コンサルタントなど、様々な仕事を経験させてもらいました。
もともと私は高校生のときから薬学に興味を持ち、東北大学・東北大学大学院で薬学の研究を行っていた薬学生です。ありがたいことに国立の研究機関で数か月間研究に従事した経験もあります。しかしながら、就職活動を通して「自分のやりたいこと」とはなにかを考え直し、研究職ではなく営業職としてキャリアをスタートしています。
詳しくは以下の記事に記載しています。
※関連記事:経験者が徹底解説 - 研究職の道を捨てて営業職を選んだ理由
新卒で入社したのは株式会社キャリアデザインセンターという人材系の上場企業です。人材紹介の営業職として 3 年間仕事をしています。主に製造業やサービス業、医療系企業をクライアントとし、第二新卒から管理職層まで幅広い人材を企業に紹介していました。大手企業から地方の町工場まで支援する中で、中小企業の採用の難しさに強い課題意識を感じ、中小企業を技術紹介という観点で支援するベンチャー企業、リンカーズ株式会社に転職をしました。
リンカーズに入社した当初は、新規事業の担当者として、主要都市で行われる展示会の事務局業務を担っていました。様々な点で組織が未整備だったこともあり、本来営業部門の管轄である商談や顧客データの整理を私が片手間で行っていたのですが、その中でインサイドセールスやマーケティングの改善が必要だと気付きました。顧客向けのセミナーやメールマガジンを企画したうえで、自らインサイドセールスの組織を作り、リード獲得からアポイント獲得までを一気通貫で行う体制を構築しました。結果的にこれがリンカーズのマーケティング部の原型となり、新たな部長を迎えマーケティング部が創設されました。気付けば毎月数百もの新規リードを生み出すチームになっていたのですが、本来やりたかった「中小企業支援」からは離れてしまったことに違和感を覚え、以前より代表と親交があった株式会社グローカルにコンサルタントとして転職をしています。
グローカルは地方企業の中でも、その地域に強い影響力を持っている中核企業を対象に、経営者の参謀として様々な支援を行う経営コンサルティング会社です。主に人材採用、営業、マーケティング領域のコンサルティングを通して、クライアントの成長に向けた伴走支援を行っています。最近では、事業戦略の見直しや新規事業の立案など、より事業の根幹に関わる支援が増えており、少しはクライアントから信頼を得られるようになったのかなと感じています。
私が目指すもの
先に述べた通り、私は、営業、営業企画、事業企画、インサイドセールス、マーケティング、経営コンサルタントと、様々な仕事を経験しています。一見、一貫性のないキャリアに見えるかもしれませんが、私の中では「企業の包括的な支援の実現」という一貫した軸があると捉えています。
新卒で入社した人材会社から転職をしようと考えたとき、「自分は定年を迎えるとき何の仕事をしているのだろうか」ということを考えました。当時、大手企業の採用の支援ばかりで中小企業に対して価値を提供できていなかったこともあり、「特定の手段では中小企業の支援は限界がある」と感じていたことを覚えています。経営の 3 大要素であるヒト・モノ・カネをカバーしないと自分は納得できないと考えた時、定年までに獲得しなければならない要素が見えました。
- ヒトやモノ、そして企業そのもののポテンシャルを「見抜く力」
- ポテンシャルを活かして企業や事業を「伸ばす力」
- これらを可能にする「資金力」
これらから、自分が目指しているものは「経営や事業に対して実践的な知見を持ち、企業の伴走支援ができる投資家」なのだろうという考えに至りました。
そのため、人材会社からの転職先も「事業の計画や戦略に携われる仕事が良いだろう」と考えましたし、どうせなら「上場前でストックオプションを行使できるチャンスがある企業なら、資金の目途も立てられそうだな」という考えも生まれます。結果として、私は事業企画の部署に転職をしており、リンカーズも 2022 年の 10 月に東証グロースの上場を果たしています(私は上場時には退職しているので、当初の計画とは違うルートになってはいるのですが)。現在の仕事である経営コンサルタントも、当初立てた計画の延長線上にある仕事のため、最短経路ではないにしても、少しずつ目指すものに近づいているのかなと感じています。
営業からのキャリアチェンジを考える前に
営業からキャリアチェンジを考える方は少なくありません。私が人材会社に勤めていたときにも、キャリアチェンジを希望する方に多くお会いしており、実際にキャリアチェンジの夢を叶えた方も少なからずいらっしゃいます。
ただ、一般的には全く別の仕事内容に挑戦することになるため、決して簡単なことではありません。ここでは、営業からのキャリアチェンジを考える前に、あらかじめ整理していただきたいことを 2 点紹介します。
1 点目は「最後に何をしていたいか」です。
3 年後や 5 年後というレベルではありません。定年を迎えるときに「あなたがどんな仕事をしているか」を想像してください。もし、思い浮かべることができないのであれば、この機会に一度考えてみることをお勧めします。
営業という仕事は肉体的にも精神的にも負荷がかかるハードな仕事です。常に周りと比較され、成果が出なければ非難されるので、遅くまで残業せざるを得ないこともあるでしょう。そんな状況であれば、営業を続けていくことに自信をなくしたり、他の仕事が輝いて見えることもあることは理解できます。しかしながら、「隣の芝は青い」と言われるように、営業を辞めれば何とかなると考えるのは危険です。他の仕事には他の仕事なりの大変さがあります。短絡的な判断をしないために重要なのが「最後に何をしていたいか」というビジョンです。もし、あなたが会計や法律の専門家を目指したいなら、営業のキャリアが直接活きる機会は少ないでしょう。ただ、年収 1,000 万を目指したい、30 代で FIRE したいなどであれば、営業職として稼ぎ続けることも選択肢に入るはずです。自分の最終的な姿を考えた時、営業の仕事がどの程度有用なのかを考え、営業以外の仕事に挑戦した方が良いと判断できてはじめてキャリアチェンジを考えるべきです。
2 点目は「目先の利益をとるか将来の利益をとるか」です。
一般的にキャリアチェンジは未経験の仕事に挑戦することです。今もらっている年収よりも低い年収になる可能性があります。人材会社の広告では、転職こそがキャリアアップであったり、年収を上げて転職することこそが成功などと言われていますが、キャリアチェンジの場合はこの考え方を捨てるべきです。もし、あなたが年収アップや労働環境の改善など「目先の利益」を求めて転職するのであればキャリアチェンジは悪手です。キャリアチェンジは、あなたの将来の夢を叶えるための行動であり「将来の利益」のための選択です。あなたにとって重要なものは何かを考えたうえで、最良の選択をしてください。
営業からのキャリアチェンジの種類
営業は、企業の利益を生む仕事であり、ビジネスの基本とも言える仕事です。だからこそ、様々な仕事に応用できる可能性を秘めています。ここでは営業からのキャリアチェンジの種類を紹介します。
社内異動
営業に限った話ではありませんが、社内異動はリスクが低いキャリアチェンジ手段と言えます。多くの日本企業は、スペシャリストよりもゼネラリストを育て、企業を総合的に支えてくれる人材を育成したいと考えています。企業によっては人手が欲しい部署の社内公募を行っていたり、定期的な人事面談で異動希望を出せる制度を持っている企業もあります。
また、官公庁や自治体などは、異動そのものが珍しくない業界です。不正防止のために行われるのが大きな理由ですが、そのほかにも 「経験を積ませる」「適材適所」「部署の人数を合わせる」 といった様々な理由から異動が行われます。
このような社内異動は、あなたの職歴を汚すことがなく、あなたが良く知っている企業(団体)で仕事ができるという点で、低いリスクでキャリアチェンジができる手段です。もし新しい仕事に挑戦したいと考えたときは、社内異動の可能性を探ってみて損はありません。
営業職として転職
営業という仕事は、業界や商材が変われば全く別の仕事になり得ます。そのため、別の業界の営業職として転職をするのは広い意味でキャリアチェンジといえます。他の職種と同じく、転職活動をして別の企業に入社する場合もありますが、営業職の場合は営業先へ転職する人もいます。
別の職種で転職
キャリアチェンジという言葉でイメージするのは、営業以外の職種で別の企業に転職するというパターンでしょう。営業であれば、クライアント先に転職をするとき、持っている業界の知見や経験を買われて別の仕事を任されるケースがあります。例えば、私が所属していた人材会社では、採用支援の経験を買われてクライアント先の採用担当やリクルーターとして転職していく方が多くいました。あなたが持っている知見や経験を求めている企業であれば、営業以外の仕事で転職できるチャンスがあります。
営業というキャリアを分解して考える
別の職種に転職するキャリアチェンジを実現するために、あなたが培ってきた営業のキャリアを分解して考える必要があります。ここでは、あなたが活躍できる転職先を考える際のヒントを「ビジネスモデル」「業界や領域」「仕事の進め方」の3つの観点から紹介します。
ビジネスモデル
あなたが所属している企業はどのようなビジネスモデルなのかを考えてみましょう。自社製品やサービスをエンドユーザーとなる顧客に直接販売するモデルでしょうか。それとも他社の製品を複数取り揃え、必要に応じて販売代理店に納品するモデルでしょうか。
このように、企業のヒト・モノ・カネ・情報の流れは様々です。似たような商品・サービスを扱っていても、ビジネスモデルが異なれば、全く別の仕事になります。一方で、一見全く違う仕事に見えても、実は似たようなビジネスモデルを持っている企業もあります。以下のリストと例を参考に、あなたの所属している企業のビジネスモデルを整理してみましょう。
- あなたの企業の顧客は誰ですか?
※顧客は法人、個人、代理店のどれに当てはまるのか
例)人材を募集している企業
- あなたの企業の商材は何ですか?
※有形商材か無形商材か、完成品か原料・中間品か、付帯するサービスがあるか
例)スキルや経験を持つ人材、転職市場の情報、採用のノウハウ
- あなたの企業が扱う商材は、顧客のどんな課題を解決しますか?
※顧客が抱えている悩みを、どのような手段で解決に導いているか
例)人手不足を解消できる。これまで実現が難しかったことを人材の持つ知見・経験・ネットワークを活用して実現させる。
- あなたの企業が扱う商材は、どのように顧客に紹介されますか?
※顧客に直接販売されるのか、代理店や小売店を仲介して紹介されるのか、既製品かオーダーメード品か
例)担当営業が顧客の要件を聞いたうえで、社内のデータベースから最適な人材を探し、ピンポイントで直接紹介される。
- 顧客が商材の購入を決定するために必要な期間はどれぐらいですか?
※商談 1 件あたりに掛かる時間や人員数はどれくらいか
例)利用そのものは無料のため契約は容易、人選をはじめてから入社に至るまで 3 か月から半年程度掛かる。その間基本的に担当営業が単独で商談をすすめる。
- あなたの企業が課題解決の対価を受け取るのはいつですか?
※キャッシュポイントは課題解決前か、課題解決後か、売り切りか定期購入か
例)人材の採用が決定したときに請求が発生する成果報酬モデル、早期退職の場合返戻金が発生する。
業界や領域
転職市場において、職種の経験と同様に業界の経験が重要視されることが多くあります。特に、企業が新たな市場に挑戦しようとする際、業界の有識者を登用しようとすることは多いため、営業からのキャリアチェンジを目指す方にとってはチャンスといえるタイミングです。また、普段相手にするクライアントの担当者が、クライアントの中でどんな役割や立場を担っているかも重要です。同じ製造業を相手にする仕事であっても、実験設備であれば研究開発向けになりますし、金属や工具であれば工場や調達購買向け、人材であれば人事向けの仕事になります。
以下のリストと例を参考に、あなたの仕事がどんな業界でどのような領域をカバーしているのかを整理してみましょう。
- あなたの企業は、一般的に何業界の企業と言われますか?
例)人材業界
- あなたが担当している顧客は、一般的に何業界の企業と言われますか?
例)製造業、小売業、専門商社など、大部分は有形商材を扱っている業界
- あなたが普段接している顧客の担当者は、企業のどの部署に所属している方ですか?
例)人事担当
- あなたが扱っている商材は、顧客の担当者にとってどんな価値を提供するものですか?
例)人材採用の母集団形成に掛かる労力を削減し、工数が掛かる求職者とのやり取りを代行することで、人事担当が人材の判断に注力できるようになる
仕事の進め方
どれだけビジネスモデルが似ていても、企業が変われば仕事の進め方が変わります。また、近しい業界や領域を経験していても、付き合い方や接し方が変われば動き方も変わります。仕事の進め方は、転職後の活躍を左右する重要な要素です。別の職種へのキャリアチェンジの場合は、なおさら仕事の進め方が変わりますので、必ず調べておくようにしましょう。志望する職種の一般的な仕事の流れを調べたうえで、今の仕事と、何が似ていて何が異なるのかを明確にしておくことが大切です。企業によっては、採用特設サイトに仕事の流れは社員インタビューが掲載されており、より具体的なイメージを作る手助けをしてくれるでしょう。参考にしてみてください。
まとめ:視野が広がれば選択肢は増える
本記事では、私の実体験を踏まえて、営業からのキャリアチェンジについて紹介しました。
私は人材会社では年間 300 名以上の転職希望者と会話をしていましたが、営業が辛いから別の仕事に変えたいという消極的な理由で転職に踏み切ろうとする方を多く見てきました。転職希望者が納得した意思決定を促すことが人材会社に勤める者の責務です。短絡的な決断をしようとしている方には、思いとどまるように促すこともありました。キャリアチェンジはあなた自身の人生を変える大きな意思決定だからこそ、慎重に判断すべきというのが私の持論です。
しかしながら、複数回の転職をしたことで見えたことも多くあります。私はキャリアの過程で、自社の顧客データベースの整理、顧客管理システムの導入や活用推進を担ったことがあるのですが、これはもともと想定していなかった経験です。今は経営コンサルタントとして、顧客の業務システムの導入に関わることもあるのですが、転職先の経験がなければ実現することはなかったでしょう。
記事の中で、「最後に何をしていたいか」を決める重要性をお伝えしました。計画を立て、計画に沿って進めることは重要な考えであることは間違いありませんが、偶発性があるからこそ仕事は面白いとも感じています。今は無意味のように思える経験も、ひょんなことからあなたの未来を切り開くきっかけになるかもしれません。キャリアチェンジは、あなたの視野を広げる手段と考えれば、一見短絡的なものであってもプラスに変わり、あなたの選択肢を増やす結果に繋がることもあると思います。一番重要なのは、今の仕事に本気で向き合うことなのかもしれません。
本記事が、キャリアチェンジにチャレンジしようと考えている方にとって、新たな気付きを与えるものになっていれば嬉しく思います。
また本コラムをお読みいただき、転職やキャリアの相談をしたいと感じていただけましたら、お気軽にSQiL Career Agent にご登録ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!