エンタープライズ営業とは?特徴や必要なスキル、他の営業手法との違いまで詳しく解説!
大企業や公的機関に対して営業活動を行う「エンタープライズ営業」。近年、SaaS企業を中心に注目されているのをご存知でしょうか。難易度が高い反面、成約となれば大きく安定した利益を得ることができるため、各企業エンタープライズ営業に力を入れ始めています。
そこで今回は、今注目のエンタープライズ営業の特徴や必要なスキルなどについてご紹介します。今後エンタープライズ営業に挑戦したい方はぜひご覧ください。
目次[非表示]
- 1.エンタープライズ営業とは
- 1.1.エンタープライズの定義
- 1.2.エンタープライズ営業のKGI
- 1.3.なぜエンタープライズ営業が注目されているのか
- 1.3.1.エンタープライズの方が受注単価が高いため
- 1.3.2.エンタープライズ導入実績になるため
- 2.エンタープライズ営業と他の営業手法の違い
- 2.1.TheModel型との違い
- 2.2.SMB営業との違い
- 3.エンタープライズ営業の特徴
- 3.1.リードの数が少ない
- 3.2.リードタイムが長く解約されづらい
- 3.3.企業あたりの売上規模が大きい
- 3.4.ステークホルダーが多く、決裁者にたどりつきにくい
- 4.エンタープライズ営業に必要なスキル
- 5.エンタープライズ営業成功のポイント
- 5.1.ABMの実践
- 5.1.1.アカウントプランの策定と実行
- 5.1.2.BDRの実行
- 5.1.3.リファラル戦略の推進
- 5.2.ターゲット企業の相関図を作る
- 6.エンタープライズ営業のキャリアの始まり
- 7.エンタープライズ営業に興味のある方はSQiL Career Agentへご相談ください
エンタープライズ営業とは
エンタープライズ営業とはどのような営業なのでしょうか。ここでは、エンタープライズ営業の定義やエンタープライズ営業が追うKGIなどをご紹介します。
エンタープライズの定義
エンタープライズとは、主に大企業や公的機関を指しますが、実はエンタープライズに明確な定義はありません。「中小企業以外の企業」という捉え方になり、中小企業の定義は中法企業庁によって以下のように定められています。
業種分類 |
定義 |
製造業 |
資本金3億円以下、 または従業員300人以下 |
卸売業 |
資本金1億円以下、 または従業員100人以下 |
小売業 |
資本金5,000万以下、 または従業員50人以下 |
サービス業 |
資本金5,000万以下、 または従業員100人以下 |
(参考:中小企業庁「中小企業・小規模企業者の定義」)
上記に当てはまらない企業がエンタープライズといえますが、その定義は企業によっても異なるのが実態です。現在日本には中小企業が約419.8万社ありますが、エンタープライズといえる企業は約1.2万社ほどで日本の企業全体の内0.3%といわれています。こうした限られたエンタープライズに対して営業を行うのがエンタープライズ営業です。
エンタープライズ営業のKGI
エンタープライズ営業のKGI(最重要目標)は、担当企業の売上を最大化すること、つまり「LTVを最大化する」ことです。LTVとは、Life Time Valueの略で、顧客の生涯価値を表す指標であり、このLTVを最大化することがエンタープライズ営業のミッションです。
LTVを最大化することがミッションのため、エンタープライズ営業にとって、受注を取ることはゴールではなくスタートになります。受注後にいかに担当企業の他の部署へサービスやプロダクトを横展開していくかを考えなければなりません。そのため、エンタープライズ営業は担当企業数が限られていることが多く、既存取引をベースに横展開を行い売上を最大化していきます。
なぜエンタープライズ営業が注目されているのか
近年、エンタープライズをターゲットにした営業活動が活発になっています。なぜエンタープライズ営業が注目されているのでしょうか。ここでは2つの理由をご紹介します。
エンタープライズの方が受注単価が高いため
このあとご紹介しますが、エンタープライズ向けの営業は圧倒的に受注単価が高く、契約数は少なくて済みます。そのため、粗利率や営業利益が良いのが特徴です。
LTVが大きく、CAC(顧客獲得コスト)が低くコスト効率が良いため、エンタープライズが注目されています。
エンタープライズ導入実績になるため
エンタープライズへの導入実績を得ると、企業の認知や信頼獲得に繋がります。他のエンタープライズのターゲットへアプローチする際、同じエンタープライズの導入実績があると受注がしやすくなる傾向にあるため、企業はエンタープライズへの営業を活発化しています。
エンタープライズ営業と他の営業手法の違い
エンタープライズ営業は、営業手法が特殊であり、他の営業手法とは異なる点も多いです。そこでここでは、SaaS企業でよく聞かれるTheModel型とSMB営業との違いについてご紹介します。
TheModel型との違い
TheModel型の営業組織とは、一連の営業工程をインサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスに分担した営業手法になります。それぞれを工程別に分けることで効率よく営業活動をすることが目的です。このTheModel型の営業手法では、「認知拡大→リードの絞りこみ→商談獲得→契約」という道筋に沿ってマーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスがそれぞれの役割を担います。つまり、最初は広くアプローチを行い、徐々にターゲットを絞っていく営業手法がTheModel型です。
対して、エンタープライズ営業は最初からターゲットを絞って営業活動を行います。特定の企業を選定した上で、その企業の情報を収集し、いかに契約に繋げるのかを考えます。
また、契約で終わらず、オンボーディングやアフターサポートを行うことで顧客に対してのエンゲージメントを高め、他部署への拡大を狙い売上の拡大化を狙います。
SMB営業との違い
エンタープライズ営業とSMB営業も営業手法が異なります。SMB営業とはSmall and Medium-sized Business Salesの略称で、中小企業をターゲットとした営業活動を指します。
SMB営業は、ターゲット企業のステークホルダーが少ないため意思決定までのリードタイムも短いのが特徴です。また、企業ごとに個別でサービスやプロダクトをカスタマイズすることは少なく、パッケージ化されたものを個別で料金を引き下げることによって契約に繋げるケースがあります。ただ、中小企業は予算が限られていることが多く、長期的な売上には繋がらないことが多いです。
対して、エンタープライズ営業は関わるステークホルダーが多いためリードタイムは長いですが、一度契約となれば長期的な売上に繋がるのが特徴です。
指標 |
エンター |
SMB |
アカウント数 |
多い |
少ない |
チャーンレート |
低い |
高い |
他部署への展開度 |
大きい |
小さい |
業界への影響 |
大きい |
小さい |
リードタイム |
長い |
短い |
エンタープライズ営業の特徴
ここでは、エンタープライズ営業の特徴について5点ご紹介します。
リードの数が少ない
先に述べたように、中小企業庁の「2021年版中小企業白書」によると、日本におけるエンタープライズは日本全体の企業の中で0.3%と示されています。そのため、そもそもターゲット数が限られており、少ないリードの中から狙いを定めて企業にアプローチする必要があります。
また、エンタープライズ側に関しても、日々多くの企業からのアプローチを受けるため、新規営業に対しての対処法が確立されていることも多く、受付を突破する難易度が非常に高いです。
リードタイムが長く解約されづらい
エンタープライズ営業では、リードタイムが長くなることも心得ておきましょう。エンタープライズでは、プロダクトやサービスを導入すると多くの社員や部署が関わるため、一度導入すれば解約はされづらいです。その分、契約に至るまで経理部や法務部などさまざまな部署に稟議を通す必要があり、必然的にリードタイムが長くなります。
また、エンタープライズの場合、予算が既に決まっているので年度途中での契約は難しい可能性があります。そのため、翌年度の導入に向けて営業することが多く、リードタイムが長くなります。
企業あたりの売上規模が大きい
エンタープライズ営業では、1件あたりの売上の規模が大きいことも特徴のひとつです。
エンタープライズでは、部署ごとに異なるサービスやプロダクトを使っていることもあります。そのため、導入後のエンゲージメントを高めることができれば、顧客の社内の口コミによって他部署にサービスを横展開できます。一度契約ができれば多くの受注を得られるため、エンタープライズ営業は複数の企業を担当することなく、特定の企業へ注力することが求められます。
また、近年注目されているSaaS企業で見られるようなサブスクリプション型のプロダクトはユーザー数が売上に直結するため、社員数の多いエンタープライズでは使う部署が増えれば増えるほど売上も比例して増えていきます。
ステークホルダーが多く、決裁者にたどりつきにくい
エンタープライズ営業は、ターゲットの企業の組織図を把握することも求められます。エンタープライズでは、プロダクトやサービスを導入するにあたって多くのステークホルダーに関わり、意思決定に至るまでに5~6名、またはそれ以上の人数と関わることもあります。その中から、契約・導入を決めるChampion(決裁者)を探し出さなければなりません。
中小企業の場合はChampionが社長であることが多いですが、エンタープライズの場合は担当部署の部長や役員であることもあります。誰がChampionで、どの部署に、どのような順番でアプローチすればスムーズに商談を進められるのか調べておく必要があるのもエンタープライズ営業の特徴です。
エンタープライズ営業に必要なスキル
ここまで、エンタープライズ営業の特徴をご紹介してきました。では、エンタープライズ営業に求められるスキルとはどのようなものでしょうか。ここでは、エンタープライズ営業に必要なスキルをご紹介します。
情報収集力
エンタープライズ営業では、ターゲットに選定した企業に対して狙いを定めてアプローチをする必要があります。ライバル企業も多い中で契約を取るためには、情報を事前に多く収集しなければなりません。そのため、さまざまな視点から企業を分析し、セグメントしていくスキルが求められます。
交渉力
エンタープライズ営業は、いかに顧客と信頼関係を築けるのかが鍵です。そのため、ライバル企業よりも先に商談を進められる交渉力やアプローチが求められます。
また、エンタープライズ営業では、担当営業1人だけではなく、社内のマーケティング部門・エンジニア部門などさまざまな部門と協力しながらターゲットの企業に対してアプローチするため、顧客だけではなく社内への交渉力も必要になります。
関係構築力
エンタープライズ営業では、商談を進めるにあたって、顧客側の内情を教えてもらい、商談を円滑に進められるように一緒に推進していく「支援者」を探す必要があります。エンタープライズではステークホルダーが多く、かつ社内での人間関係や力関係があるため、担当者がどのような人なのか、誰からアプローチすればよいのか、どのようにすれば稟議を通しやすくなるかなどを把握しておくことによって、商談が円滑に進みます。顧客側に味方を見つけるため、さまざまな人と関係を築く力もエンタープライズ営業には必要です。
提案力
関わるステークホルダーが多いエンタープライズ営業では、商談のプレゼンにおける提案力も求められます。同じ企業の中でもプレゼンする相手によってプレゼン内容も変え、相手に響くような内容にしなければなりません。
予算や運用スケジュール、納期にフォーカスした内容の時もあれば、サービスやプロダクトを導入することによって得られる効果にフォーカスする必要があるときもあります。状況に応じた提案力が求められるのもエンタープライズ営業の特徴です。
リスク回避力
エンタープライズ営業では、1件あたりの売り上げ規模が大きい分、失注のリスクも考えておかなければなりません。ステークホルダーが多く、どこで反対意見が起こるか分からないためです。
そのようなリスクヘッジにあたって受注確度を判断する考え方が「BANT」です。
- B(Buget) :サービスやプロダクトの契約において想定している予算金額
- A(Authority) :意思決定者が誰なのか
- N(Needs) :どのようなニーズがあり、そのニーズと提案内容がマッチしているか
- T(Timeframe) :導入時期、今導入する必然性があるのか
エンタープライズ営業は商談や顧客の意思決定に至るプロセスが複雑なため、こうしたリスクヘッジも必要なスキルになります。
エンタープライズ営業成功のポイント
難易度の高いエンタープライズ営業ですが、成功させるためにはどのようなポイントを押さえればよいのでしょうか。ここではエンタープライズ営業成功のポイントをご紹介します。
ABMの実践
エンタープライズ営業では、ABMといわれる営業手法が多く用いられます。ABMとは、Account Based Marketingの略称で、特定の企業に向けてアプローチする営業手法です。ここではABMについてさらに細かくご紹介します。
アカウントプランの策定と実行
ABMでまず行うのは、アカウントプランの策定です。アカウントプランとは、ターゲット企業から戦略的に売上を拡大していくための戦略を指します。ターゲット企業のどの部門に、どのようなサービスやプロダクトを、どのような目的で導入してもらうのか、戦略的に計画していきます。
アカウントプラン策定にあたり、下記のような内容を調べる必要があります。
- 会社概要(創業・本社・役員一覧など)
- 公開されている情報(資本金・売上・利益の推移・事業毎の売上比率と推移など)
- 顧客の商品情報(どのような商品を売っているのか・どのような対象に売っているのか)
- 顧客の保有資産情報(利用中のサービスやプロダクト)
- 顧客の組織情報(組織図・経営状況・戦略方針・現状の課題)
また上記のことを調べる際には、事前にSFAやCRMに蓄積されている情報から特定することも有効です。
BDRの実行
アカウントプランができたら、ターゲット企業にアプローチをします。その際、インサイドセールスの手法のひとつであるBDRでアプローチすることが有効です。BDRとはBusiness Development Representativeの略称で、アウトバウンド型の営業手法であり、ABMの際は以下のような手段でアプローチを行うことが多いです。
- 電話
- メール
- 手紙
- SNS
リファラル戦略の推進
上記のような施策とは別に、リファラル戦略でアプローチをしていく手法もあります。リファラル戦略とは、ユーザー自身が知人や知り合いに紹介することで、そのサービスやプロダクトの価値を広げていく手法です。BDRは社内のリソースを活用するのに対し、リファラル戦略は外部のリソースを活用するため、より効率的にターゲット企業にリーチできます。
リファラル戦略として挙げられる例は以下のものがあります。
- 紹介営業
既にターゲット企業の情報を持っている企業に対し、手数料や売上の一部を支払うことでターゲット企業を紹介してもらう手法です。確実にターゲット企業の決裁者にアプローチできるため、成果を上げやすいのが特徴です。
- 販売代理店契約
代理店は多くの企業との接点があるため、そのリソースを利用して営業を代行してもらう手法になります。代理店も顧客と関係性を既に築いていることが多いため、紹介営業同様、短期間で成果を上げやすいです。
▼アカウントセールスについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください
アカウントセールスとは?仕事や必要なスキルを解説!
ターゲット企業の相関図を作る
大企業を相手にするエンタープライズ営業では、ターゲット企業の相関図を把握することが必須です。購入を担当する部署・実際にプロダクトを利用する部署・現場の部署と連携している部署・法務部や経理部など、エンタープライズの場合さまざまな部署が関わります。それぞれの部署にはキーマンがおり、最終的な意思決定者も把握しなければなりません。誰が支援者で、誰がキーマンで、どのような上下関係や人間関係があるのかを理解しておくことで、スムーズに商談を進めることができます。
また、相関図を作成しておくと、契約後に他部署に横展開をする際、どのように話を進めれば他部署にも展開していけるのか戦略を練ることができます。
エンタープライズ営業のキャリアの始まり
ここまで、エンタープライズ営業についてご紹介してきましたが、これからエンタープライズ営業を目指すにはどのようなキャリアを積めばよいのでしょうか。そこでここでは、一般的にエンタープライズ営業のキャリアの始まりはどこからなのかをご紹介します。
SMB担当からエンタープライズ営業
エンタープライズ営業は非常に難易度の高い営業になります。そのため、いきなりエンタープライズ営業を任されるケースは多くありません。まずはSMB担当としてインサイドセールスやフィールドセールスで実績を積んでから、エンタープライズ営業に異動になることが多いです。
そのため、エンタープライズ営業に挑戦したい場合は、まずはインサイドセールスやフィールドセールスで、自社サービスやプロダクトについての理解を深め、与えられたミッションやKPI・KGIをコンスタントに達成することを目標にしましょう。
新卒で最初からエンタープライズ営業を担当している
新卒で入社後からエンタープライズ営業を担当するというケースもあります。この場合は、新規営業ではなく既存営業であるパターンが多いです。
現時点で既存営業としてエンタープライズ営業を経験している場合は、ただ日々の営業活動をこなすだけではなく、提案の幅を広げたり、他部署への契約拡大も挑戦すると、転職活動の際に評価されるため意識してみるとよいでしょう。
転職先のポジションがエンタープライズ営業
稀に、転職していきなりエンタープライズ営業を任されることもあります。このケースは今までエンタープライズ営業の経験があったり、社内にリソースがなかったりする場合のことが多いです。
先にも述べましたが、エンタープライズ営業は難易度が高く、SaaS企業でも注目されているものの経験者を求めることが多いです。求人票に記載されている採用要件を確認の上、最初からエンタープライズ営業に挑戦できるか確認するとよいでしょう。
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今回は、エンタープライズ営業についてご紹介しました。
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