【カスタマーセールス】仕事内容やカスタマーサクセスとの違い、市場価値について徹底解説!
近年のSaaS企業で見られるカスタマーセールスという職種。どのような業務内容かご存じでしょうか?
今回は、今注目されているカスタマーセールスが、従来のカスタマーサクセスや営業職とは何が異なるのか、またその職業が生まれた背景を解説します。
目次[非表示]
- 1.カスタマーセールスとは
- 1.1.カスタマーセールスの定義
- 1.2.なぜ注目されているのか
- 2.カスタマーサクセス/通常セールスとカスタマーセールスの違い
- 2.1.カスタマーサクセスとの違い
- 2.2.通常のセールスとの違い
- 3.カスタマーセールスの具体的な仕事内容
- 3.1.顧客データ分析
- 3.2.提案活動(アップセル・クロスセル)
- 3.3.クロージングと契約更新フォロー
- 3.4.社内連携とフィードバック
- 4.カスタマーセールスに求められるスキル
- 4.1.営業力・コンサルティング力
- 4.2.データ分析力・テクノロジーリテラシー
- 4.3.関係構築力
- 5.カスタマーセールスに向いている人
- 5.1.顧客の成功を喜べる人
- 5.2.中・長期的な視点や関係構築ができる人
- 5.3.ロジカルに考え、データに基づく判断ができる人
- 6.カスタマーセールスの市場価値は?どうやったらなれる?
- 6.1.市場価値の高さ
- 6.2.新しい職業だからこそ、未経験でもチャンスあり
- 6.3.優遇される経験やスキル
- 7.まとめ
カスタマーセールスとは
カスタマーセールスの定義
カスタマーセールスとは、既存顧客を対象にアップセルやクロスセルを実行し、売上拡大を担う「攻めのポジション」です。
最近のSaaSビジネスでは、新規獲得だけでなく、すでに契約中の顧客から追加売上を生み出すことが重要視されています。従来のカスタマーサクセス(以下サクセス)は解約防止や活用支援といった「守り」が中心でしたが、さらなる事業成長のために既存顧客に対して「守り」だけではなく、「攻め」の姿勢で深耕していく動きが活発になってきています。
そこで、サクセスで培った顧客理解を活かしながら、積極的に売上アップにコミットする専門の組織として「カスタマーセールス」が注目されるようになりました。
なぜ注目されているのか
ここ数年でカスタマーセールスが台頭しているのは、主に以下のような背景があります。
- 競合増加・差別化の難化
- 同種のSaaSが乱立し、新規顧客の奪い合いが熾烈化。
- 新規顧客獲得コスト(CAC)の高騰
- 広告費や営業活動の費用対効果が落ち、効率が悪化。
- 投資家の見る目の変化
- 「早期黒字化」や「安定的なARR拡大」を重視する流れが強まり、既存顧客の深耕に着目
このように、新規開拓が難しくなる中で「すでに導入済みの顧客にアプローチするほうが効率的」だと考えられるようになったのです。
そこで、サクセス組織が担っていた既存顧客との関係性をベースにしつつ、アップセルやクロスセルで売上を伸ばす活動に特化したカスタマーセールスが求められるようになっています。
カスタマーサクセス/通常セールスとカスタマーセールスの違い
カスタマーサクセスとの違い
カスタマーサクセス(以下サクセス)は、導入サポートや問い合わせ対応を通じて解約防止を中心に活動する「守りの役割」が強い組織です。
一方、カスタマーセールスは、サクセスで蓄積された顧客の課題や利用状況の情報をもとに、「もう一段階の導入拡大」が可能かどうかを検討・提案します。
ただ、ここで注意点としては、組織によって「攻め」と「守り」が分かれている組織と、「どちらもやる」というケースがどちらもあります。そのため、カスタマーサクセスはアップセル/クロスセルをしないという訳ではありません。既存のカスタマーサクセスの組織や考え方の中でも当然セールス要素も含んでいます。
サクセス(守り)
- 解約防止、顧客満足度向上を目的に顧客をフォロー
- オンボーディングや継続支援がメイン業務
カスタマーセールス(攻め)
- アップセル/クロスセルで売上アップを目指す
- 追加導入のクロージングやインセンティブ獲得にコミット
サクセスが築いた顧客理解を活かして、攻めの側面に専念するのがカスタマーセールスだと捉えるとわかりやすいでしょう。
💡カスタマーサクセスがどのような仕事か知りたい方はこちらから
カスタマーサクセスとは?仕事の特徴や必要なスキルを解説!
通常のセールスとの違い
「セールス」という名がついている以上、新規顧客開拓と混同されることも多いです。
しかし、カスタマーセールスはあくまでも「既存顧客」を対象にしている点が大きな違いです。
新規セールス
- 見込み顧客(未導入)を契約に導くのがミッション
- 市場リードの獲得から商談化、成約までのプロセスが中心
カスタマーセールス
- すでに契約している顧客に、上位プランや関連サービスを案内
- 追加提案やコンサル的アプローチを行い、ARRやLTVを拡大する
言い換えると、「契約前」か「契約後」かというステージの違いが、通常のセールスとカスタマーセールスを分ける大きなポイントです。新規セールスは導入決定前の説得力が鍵となる一方、カスタマーセールスは導入後の活用実績を元に追加投資を促す活動が中心になります。
カスタマーセールスの具体的な仕事内容
顧客データ分析
カスタマーセールスは「顧客データの分析」からすべてが始まります。
理由は、アップセルやクロスセルのチャンスを見つけるためには、既存顧客がどの機能をどれだけ活用しているかを正確に把握する必要があるからです。ログイン頻度や利用機能、契約プラン、過去の問い合わせ履歴など、多角的に情報を収集し、顧客にとって最適な追加提案ができる状態をつくります。
この分析が甘いと、的外れな提案をして信頼を損なったり、せっかくの見込みがある顧客を放置してしまったりする恐れがあります。
提案活動(アップセル・クロスセル)
次に、カスタマーセールスのメイン業務とも言えるのが「提案活動」です。
既存顧客の課題や自社サービスの導入目的を深く理解し、上位プランや関連サービスを提示することが重要なステップになります。
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アップセル(Upsell)
今のプランより高機能・高価格のサービスへ移行してもらう。
例:「データ解析の回数を増やしたいなら上位プランがおすすめです」 -
クロスセル(Cross-sell)
新たな機能や別の製品・サービスを追加購入してもらう。
ここで大事なのは、「顧客がいつ・何を求めているか」を的確に把握するためのヒアリング力と、提案をするまでの関係構築力です。「ただ売りたいから提案する」のではなく、顧客の成功をより高い水準で実現する方法を一緒に考える姿勢が求められます。
クロージングと契約更新フォロー
提案だけで終わらず、実際に追加契約を結ぶところまでやりきるのがカスタマーセールスの責任範囲です。
意思決定者への折衝や契約手続きのサポートも必要となります。
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経営層や上司へのプレゼン資料の作成
ROI(投資対効果)の具体的な数字を示し、導入のメリットを明確化。 -
社内稟議の進捗管理
顧客企業側で書類を通すプロセスがあれば、スムーズに完了するようフォローする。 -
契約更新後のフォローアップ
追加導入した機能が活用されているか確認し、さらに追加ニーズがないかを継続的に探る。
クロージング後も、顧客満足度を下げないように注意深く見守りながら、「次のチャンス」を捉えていく視点が大切です。
社内連携とフィードバック
カスタマーセールスが社内で得た顧客情報は、プロダクト開発やマーケチームにも重要なフィードバックをもたらします。
理由は、顧客からの要望や使いづらい機能の指摘などを製品改善に活かすことで、さらにアップセルを促しやすい製品に進化させられるからです。
たとえば、「顧客Aがこういう要望を持っているので、次回のアップデートで検討できませんか?」と開発チームに提案することで、より魅力的なサービスを作り出す好循環が生まれます。
結果的に、カスタマーセールスが収集した生の声が、プロダクト全体の競争力向上に結びつくわけです。
カスタマーセールスに求められるスキル
営業力・コンサルティング力
当たり前ですが、アップセル・クロスセルのベースは「セールス」にあるため、営業力・提案力は求められます。そのため、顧客のビジネス目標や課題を整理し、上位プランや別商材を導入するメリットをロジカルに示す力が求められます。そのためのプレゼン資料の作成や交渉術が必須です。
また、上記を実行するにあたって顧客の課題や現状を深く掘り下げるコンサルティング的アプローチが欠かせません。
「なぜ顧客がその問題を抱えているのか」「追加機能でどう解決できるのか」を徹底的に考え、価値を提案します。見込みが薄い顧客に押し売りをするのではなく、本質的な課題解決をサポートする視点が大切です。
データ分析力・テクノロジーリテラシー
顧客の利用状況(ログイン頻度や機能活用度合い)や、契約プランの履歴などを分析し、ベストなタイミングと内容で提案するのがカスタマーセールスの仕事です。
また、自社のサービス以外にもSFAやCRMと呼ばれる営業回りのITツールをベースとした活動となることが多いため、それらのリテラシーが必要になってきます。
関係構築力
既存顧客とは長期的な関係を築くことになります。顧客とのやりとりの中で生まれる小さなニーズや不満を早期にキャッチし、それを追加導入の機会に繋げる柔軟なコミュニケーション力が重要です。
一方で、セールスだけでなく、いわゆるサポートとのバランス感覚が求められる活動でもあります。
カスタマーセールスに向いている人
顧客の成功を喜べる人
カスタマーセールスは「顧客の成長やサクセスが結果、自社の成長につながる」構造です。
顧客が導入効果を実感し、ビジネス成果を上げることにやりがいを感じられる人は、この職種で大いに力を発揮します。売上目標を達成するだけでなく、顧客企業の成功を真剣に考えられる姿勢が大切です。
中・長期的な視点や関係構築ができる人
新規セールスと比べると、カスタマーセールスは比較的長いスパンで顧客と関わるケースが多いです。
すぐに成果が出ないとしても、じっくり利用状況を観察しながら最適なタイミングで追加提案を行うなど、長期的なリレーション構築を重視できる人が向いています。短期的な数字に一喜一憂せず、息の長いアプローチを続けられる力が必要です。
ロジカルに考え、データに基づく判断ができる人
カスタマーセールスは、感覚だけで動くのではなく、利用ログや顧客の業務データ、過去の提案実績などをもとに判断する場面が多々あります。
顧客の要望と実際の利用状況が合致しているか、投資対効果をどう算出するか、といった場面でロジカルシンキングが欠かせません。定量データを活用しながら筋道立てて提案を考えられる人に向いている仕事です。
カスタマーセールスの市場価値は?どうやったらなれる?
市場価値の高さ
カスタマーセールスは、「守り」のカスタマーサクセスと「攻め」のセールス要素を融合しているため、複数のスキルセットを同時に活かせる人材としてセールス職の中でも市場価値が高い傾向にあります。
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企業にとって欠かせない存在
新規獲得コストが上がるなか、既存顧客の売上拡大は経営戦略の要となります。
カスタマーセールスが顧客単価の向上やLTVの最大化に貢献することで、会社の収益基盤を安定させるという大きな役割を担います。 -
キャリアの幅が広がる
セールススキル+サクセス的視点+コンサル的ノウハウが身につくため、将来的に事業開発やプロダクトマネジメントなどにもキャリアを展開にも繋がります。
顧客接点の経験を活かして、マネージャーやエグゼクティブ層にステップアップする道もあります。
新しい職業だからこそ、未経験でもチャンスあり
カスタマーセールスは、比較的新しい職業・考え方のため、未経験者でも採用される可能性が十分にあります。
理由として、SaaSビジネスの拡大とともに、企業が「既存顧客のアップセル・クロスセルを担う専門組織」を立ち上げるケースが増えているからです。これまで明確に分かれていなかった「営業要素」と「サクセス要素」を掛け合わせたポジションとして、試行錯誤しながら人材を採用・育成している企業が多いのが現状です。
優遇される経験やスキル
未経験でもOKな求人が多い一方で、以下のような経験やスキルを持っているとより優遇されやすい傾向があります。
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セールス要素
・新規営業やフィールドセールス、インサイドセールスなどの経験。
・提案資料作成や顧客折衝の実績があれば、アップセル・クロスセルの提案活動で強みを発揮しやすい。 -
カスタマーサクセス要素
・SaaSプロダクトの導入支援や解約防止の取り組み。
・顧客成功の観点から、長期的なリレーション構築に慣れている人材は即戦力になる。 -
カスタマーサポート要素
・問い合わせ対応やユーザーサポートの実績。
・トラブル解決を通じて得た顧客理解やコミュニケーション力が、追加提案の場面で大いに役立つ。 -
コンサルティング要素
・顧客の課題を深掘りし、ソリューションを提示してきた経験。
・顧客の業務プロセスを踏まえたアドバイスや、データ分析のノウハウはカスタマーセールスでも重宝される。 -
自社サービスのユーザー業務に関する知見
・自社サービスがターゲットとする業界で働いた経験や、その業務フローを理解していると説得力が増す。
・例: 会計ソフトのカスタマーセールスにおいて、経理・財務の実務知識があると課題提案がしやすい。
これらの要素が重なれば重なるほど、アップセル/クロスセルの成功率が高まるため、企業はこうしたバックグラウンドを持つ人を高く評価する傾向があります。
総じて、カスタマーセールスは今後も拡大が見込まれるポジションであり、複数の業務領域を横断できる人材ほど希少性が高まるでしょう。企業が「守りと攻めを両立させたい」と考えるSaaS市場の流れにマッチした働き方のため、未経験でも前向きに挑戦する価値が十分にあります。
まとめ
カスタマーセールスは、まだ新しい考え方/職種ですが、顧客と企業の“両方の成長”にコミットできるやりがいに満ちています。
「セールスが好き」「顧客の成功を喜びたい」「長期的な関係構築を楽しめる」── そんな思いがある方にとって、最適なフィールドになるでしょう。逆に、企業としてカスタマーセールス組織を立ち上げようと考えている場合も、顧客満足度と売上拡大を同時に実現できる強力なドライバーとなるはずです。
本コラムが、カスタマーセールスという職種・組織に興味を持っていただくきっかけになれば幸いです。