【今さら聞けないIT業界】SIer・SES・SaaSの違いとは?

こんにちは。営業職特化の転職エージェント『SQiL Career Agent』事業オーナーの武 拓矢です。IT業界への転職を考える方の中には、こんな悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか?
IT業界に興味があるけど、SIer、SES、SaaS…正直、違いがよく分からない

営業パーソン
営業としてキャリアアップしたいけど、どの業界を選べばいいんだろう?

営業パーソン
IT業界が成長し続ける一方で、その内情は複雑化しており、キャリアの選択に悩む営業職の方は少なくありません。
しかし、ご安心ください。これらの言葉の違いと業界構造を正しく理解すれば、あなたのキャリアにとって最適な道筋が必ず見えてきます。
今回は、我々の社内勉強会でもテーマとなった、SIer・SES・SaaSという3つの種類について、それぞれのビジネスモデルから営業のキャリアパスまで、徹底的に解説します。
3分でわかる!SIer・SES・SaaS 早見比較表

まずは全体像を掴むために、それぞれの特徴を簡単な言葉で比較してみましょう。
種類 | SIer (エスアイヤー) | SES (エスイーエス) | SaaS (サース) |
ビジネスを一言で | システム開発の「メーカー」 | IT技術サービスの提供者 | クラウド上の「高機能な汎用ツール」 |
提供するもの | 顧客専用のオーダーメイドシステム | エンジニアの業務遂行能力(技術サービス) | 誰もが使える完成されたシステム |
収益モデル | 開発費用(数千万〜数億円)+保守費用 | エンジニアの稼働時間に応じた月額費用 | システム利用料(月額・年額のサブスク) |
営業スタイル | 技術営業(理系的アプローチ) | プロジェクト支援型営業 | ビジョンセリング(IT知識を伴う課題解決型) |
IT営業については別の記事でも詳しく解説しています。
IT営業とは?IT営業に向いている人の特徴やキャリアパスについて徹底解説!
それぞれの業界を深掘り解説
それでは、一つひとつの業界について、より詳しく見ていきましょう。
SIerとは?― システムをゼロから創る「メーカー」

SIer(エスアイヤー)は、System Integrator(システムインテグレーター)の略。顧客の要望に合わせて、業務システムなどをオーダーメイドで開発・納品するのが主なビジネスです。
業界構造
顧客の基幹システムなどを開発します。開発費用は数千万〜数億円と高額になるため、主な顧客は大手企業や官公庁です。
営業スタイル
顧客の複雑な課題に対し、自社の技術力でどう解決できるかを提案する「技術営業」が求められます。システムの要件定義から関わるため、深いIT知識が必須となり、難易度は非常に高いです。理詰めで物事を考える「理系の頭」が活きる世界と言えるでしょう。
求人の特徴
顧客数が限られており、契約期間も3〜5年と長いため、求人数は比較的少ない傾向にあります。
SESとは?― ITプロジェクトの「助っ人・専門家集団」

SES(エスイーエス)は、System Engineering Service(システムエンジニアリングサービス)の略。システムの開発や運用を行いたい企業に対し、エンジニアの技術サービスを提供するビジネスです。指揮命令権はクライアントにはなく、自社のエンジニアが持つスキルや経験に基づいた業務を遂行します。
業界構造
SIerや事業会社が開発を行う際に、技術的なリソースが不足している部分を補ったり、専門性の高い領域を担うことが多くあります。
営業スタイル
顧客が「どんな業務遂行能力を必要としているか」をヒアリングし、自社のエンジニアのスキルや経験を基に、最適な技術サービスを提案する「プロジェクト支援型営業」が中心です。契約形態や法務上のリスクを理解し、エンジニアのキャリアプランを考慮しながら、顧客のニーズを高度に調整するスキルが求められます。
求人の特徴
IT化を進めたい企業は世の中に無数にあり、エンジニア不足は深刻なため、営業の求人数は非常に多いです。
SES営業については別の記事でも詳しく解説しています。
【SES営業ってどんな仕事?】向いている人や「きつい」と言われる理由、豊富なキャリアパスについてもご紹介!
SaaSとは?― クラウドで提供される「高機能な汎用ツール」

SaaS(サース)は、Software as a Service(サービスとしてのソフトウェア)の略。自社で開発したクラウド上のソフトウェアを、月額・年額の利用料で提供するビジネスモデルです。
業界構造
これまでSIerが高コストで提供してきた市場に対し、安価で導入しやすいSaaSが急速に普及。特に中小企業から支持を広げ、今では大手企業への導入(リプレイス)も進んでいます。
営業スタイル
サービスは既に完成しているため、「この機能で何ができるか」ではなく、「このサービスを使えば、あなたの会社の未来がどう良くなるか」を提示する「ビジョンセリング」が求められます。顧客の潜在的な課題を言語化し、その解決策として自社サービスを提案しますが、特にエンタープライズ向けの営業では、顧客の複雑なシステム構成や業務プロセスを深く理解するためのIT知識が不可欠です。
また、多機能SaaS(マルチプロダクト)が増加しているため、顧客の課題に対して複数の機能を組み合わせた解決策を提案する際にもIT知識が必要とされます。
求人の特徴
急成長中の市場であり、事業拡大のために常に新しい営業人材を求めているため、求人は豊富です。
SaaS営業については別の記事でも詳しく解説しています。
SaaS営業への転職がおすすめの理由とは?注目される背景を解説
【キャリア戦略】営業職のキャリアパスはどう変わる?
では、これらの業界は営業としてのキャリアにどう影響するのでしょうか。
おすすめのキャリアパス:SES → SaaS

SQiL Career Agent
武 拓矢
IT業界未経験から、将来的にSaaS業界で活躍したいと考えている方には、まずSES営業を経験することを強くお勧めします。
SESの営業は、日々多くのITプロジェクトやエンジニアと関わるため、IT業界の「共通言語」や商習慣を自然と身につけることができます。全くの未経験でSaaSに飛び込むよりも、SESでITの基礎体力をつけてからの方が、SaaSの営業としてスムーズに立ち上がり、より高い成果を出すことが可能です。
難しいキャリアパス:SIer ⇔ SaaS
意外に思われるかもしれませんが、SIerとSaaS間のキャリアチェンジは非常に難しいのが実情です。

SQiL Career Agent
武 拓矢
前述の通り、両者の営業スタイルは「技術売り」と「ビジョン売り」で、求められる思考法が全く異なります。SIerで培った深い技術知識は、SaaSの営業現場では必ずしも武器になるとは限りません。むしろ、SaaS特有の課題解決型の提案スタイルを一から学ぶ必要があり、多くの人が苦戦します。これはIT知識を持った「SaaS営業の未経験者」という扱いに近くなります。
ただし、SaaS企業の中には、複雑なソリューション提供や高度な技術理解を求めるポジションも存在します。そのような技術力を求めるSaaS企業のポジションであれば、SIerで培った専門知識が強みとなり、キャリアチェンジの可能性は大いにあります。
あなたに最適なキャリアを見つけるために
ここまで、SIer、SES、SaaSの違いを解説してきました。
- SIer:高度な技術知識を武器に、大規模なプロジェクトを動かしたい方
- SES:コミュニケーション能力を活かし、技術サービスの提案を通じてIT業界への第一歩を踏み出したい方
- SaaS:顧客のビジネス課題を解決し、事業の成長を共に描きたい方
どの業界が優れているという話ではありません。あなたの強みや価値観、そして将来のビジョンに、どの業界が最もフィットするのかを考えることが何よりも重要です。
この記事を読んでも、「自分はどこが向いているんだろう?」と悩んでしまう方もいるかもしれません。
そんな時は、ぜひ我々『SQiL Career Agent』にご相談ください。あなたの経験と想いを丁寧に紐解き、最高のキャリアを共に描くパートナーとして、全力でサポートすることをお約束します。


