SaaS営業への転職がおすすめの理由とは?注目される背景を解説
人材の流動化が進み、転職をする人が増えています。デジタル化が加速する現代社会において、SaaS営業は転職先候補として人気を集める職種のひとつです。
本記事では、SaaS業界の基礎知識に触れつつ、転職先としておすすめの理由や、転職活動における注意点などを解説します。ぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.SaaS営業への転職が注目される理由
- 1.1.拡大を続けるSaaS市場と、それに伴う求人の増加
- 1.2.市場価値の高い「科学的な営業スキル」が身につく
- 1.2.1.データドリブンな提案力の習得
- 1.2.2.「THE MODEL」型組織での連携経験
- 1.2.3.顧客の成功(カスタマーサクセス)を追求する思考
- 2.SaaS業界とは?
- 3.SaaS営業におけるおもな職種
- 3.1.ビジネス部門のSaaS職種
- 3.2.開発部門のSaaS職種
- 3.2.1.フロントエンジニア
- 3.2.2.サーバーエンジニア
- 3.2.3.インフラエンジニア
- 3.2.4.プロダクトマネージャー
- 4.SaaS営業で得られる、市場価値の高いスキル
- 5.SaaS営業で求められるのは「成果を再現する思考力」
- 6.SaaS営業への「未経験転職」は、もう終わり?求められる準備とは
- 7.SaaS営業からのキャリアパス
- 7.1.1. 営業のプロとして、道を「深める」
- 7.2.2. 経験を「横に広げる」
- 7.3.3. 新たな領域へ「飛び出す」
- 8.後悔しないSaaS転職、成功のための3ステップ
- 8.1.Step 1: 自己分析で「転職の軸」を明確にする
- 8.2.Step 2: 「軸」に合う、心から共感できる企業を選ぶ
- 8.3.Step 3: 転職エージェントを活用し、入社後の「ギャップ」を防ぐ
- 9.まとめ
SaaS営業への転職が注目される理由
SaaS営業への転職が注目される背景について、市場拡大とキャリアパスの観点から解説します。
拡大を続けるSaaS市場と、それに伴う求人の増加
SaaS営業が、今最も注目されるキャリアの一つである最大の理由は、その圧倒的な市場の成長性にあります。
実際に、独立系ベンチャーキャピタルであるOne Capital株式会社が発表した市場調査レポートによると、日本のSaaS市場規模は2024年の1.7兆円から、2028年には約3兆円規模にまで拡大すると予測されています。
このように市場が急拡大を続ける中で、事業成長のエンジンとなる営業職の求人も、当然ながら増加の一途をたどっています。もはやSaaSは一部の先進的な企業だけのものではなく、あらゆる企業の活動を支える社会インフラとして定着しつつあります。この将来性の高い市場でキャリアを築くことは、非常に魅力的な選択肢と言えるでしょう。
出典:One Capital株式会社「Japan SaaS Insights 2025」, PR TIMES, 2025年6月25日発表
(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000032.000061145.html)
市場価値の高い「科学的な営業スキル」が身につく
SaaS営業の大きな特徴は、その活動がデータに基づいて、極めて科学的・論理的に行われる点にあります。従来の「経験と勘」に頼る営業スタイルとは異なり、市場価値の高い、再現性のある営業スキルを体系的に身につけることができます。
具体的には、以下のような経験を通じて、自身のスキルを大きく成長させられます。
データドリブンな提案力の習得
SaaS営業では、顧客の利用状況データなどを基に、ROI(投資対効果)を明確に提示する提案が求められます。「導入すれば〇%のコスト削減が見込めます」といった、数字で語る論理的な提案力が徹底的に鍛えられます。
「THE MODEL」型組織での連携経験
マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスといった、各部門が連携して成果を出す「THE MODEL」型の組織で働く経験は、それ自体が大きな価値を持ちます。自身の役割だけでなく、ビジネス全体の流れを俯瞰する視点が養われます。
顧客の成功(カスタマーサクセス)を追求する思考
SaaSは「売って終わり」のビジネスではありません。契約後の顧客にいかに成功してもらうかが、事業の成長の鍵を握ります。そのため、解約率(チャーンレート)を下げ、LTV(顧客生涯価値)を最大化するという、顧客と長期的に向き合う、本質的な営業思考が身につきます。
SaaS業界とは?
SaaS業界について、転職を検討するにあたって知っておきたい基礎知識を解説します。
SaaSの意味
SaaSとは、「Software as a Service」の略称です。日本語では「サービスとしてのソフトウェア」と訳します。SaaSにおけるソフトウェアはクラウド上で提供され、ユーザーはインターネット環境さえあればサービスにアクセスできます。
SaaSの種類
SaaSは提供するサービスによって、「ホリゾンタルSaaS」と「バーティカルSaaS」に分類されます。ホリゾンタルSaaSは、業界や職種を問わず活用できるサービスです。バーティカルSaaSは、特定の業界や業種に特化した専門的な業務支援を行うサービスです。
SaaSの料金体系
SaaS製品では多様な料金モデルが採用されていますが、中心となるのはサブスクリプション方式です。おもなサブスクリプション方式は以下の通りです。
- フリーミアム:基本機能を無料で提供し、オプションを希望するときのみ課金が必要
- 定額プライシング:一定の料金で基本機能もオプションも込みで提供される
- 使用量プライシング:実際の利用量に応じて課金される
- 階層型プライシング:ベーシック・スタンダードなど、複数の料金プランがあらかじめ提示されている
SaaS営業におけるおもな職種
SaaS企業の営業組織は、顧客の獲得から契約後の成功までを、リレーのように各部門が連携して担う「THE MODEL(ザ・モデル)」という分業体制を敷いているのが一般的です。ここでは、その代表的な4つの職種を解説します。
ビジネス部門のSaaS職種
ビジネス部門は、おもに顧客の獲得や関係維持といった営業関連の役割を担っています。SaaS企業では営業職がより専門的に細分化される傾向にあります。サブスクリプションモデルが主流であるSaaS企業において、製品販売と継続利用の促進は、明確に担当を分ける必要があるためです。
マーケティング
【ミッション】:見込み顧客(リード)の獲得
営業プロセス全体の出発点です。Web広告やSEO、セミナー(ウェビナー)の開催などを通じて、自社の製品・サービスに興味を持つ可能性のある、質の高い見込み顧客(リード)を数多く集めることをミッションとします。
主なKPI: リード獲得数、MQL(Marketing Qualified Lead)数、CPL(Cost Per Lead)など
インサイドセールス
【ミッション】:商談機会(アポイント)の創出
マーケティングが集めた見込み顧客に対し、電話やメールでアプローチし、成約の可能性が高い「ホットな顧客」を見極める役割です。顧客の課題をヒアリングして商談機会を創出し、フィールドセールスへと繋ぐ、営業組織の「司令塔」とも言える存在です。
主なKPI:商談創出数(SQL数)、商談化率など
※参考記事:インサイドセールスとは? 特徴や必要なスキル、どんな人が向いているのかを解説!
フィールドセールス
【ミッション】:新規契約の獲得(クロージング)
インサイドセールスが創出した商談機会を引き継ぎ、対面やオンラインで本格的な提案を行い、契約を締結する(クロージングする)役割です。顧客の課題解決に深く踏み込み、最終的な意思決定を後押しする、まさに営業の「クローザー」です。
主なKPI: 受注数、受注額(ARR/MRR)、受注率など
※参考記事:フィールドセールスとは? “THE MODEL型” 営業組織の役割分担や必要なスキルを解説!
カスタマーサクセス
【ミッション】:顧客の成功支援と、契約の維持・拡大
「売って終わり」ではなく、契約後の顧客を成功に導き、長期的な関係を築く役割です。製品の活用支援を通じて顧客満足度を高め、解約(チャーン)を防ぎ、追加契約(アップセル・クロスセル)に繋げることで、LTV(顧客生涯価値)を最大化させます。
主なKPI: 解約率(チャーンレート)、LTV、アップセル・クロスセル額など
※参考記事:カスタマーサクセスとは?仕事の特徴や必要なスキルを解説!
開発部門のSaaS職種
開発部門は、製品開発をおもに担当するエンジニアの集団です。開発部門に所属する担当者は、フロントエンジニア・サーバーエンジニア・インフラエンジニアなどの実務担当と、開発を推進する役割を任されるプロダクトマネージャーに分類されます。
フロントエンジニア
フロントエンジニアは、ユーザーインターフェース(UI)の設計や実装、カスタマイズを担当します。顧客の操作性向上や視覚的な満足度を高めるには、機能性とデザイン性を両立したUIを構築する必要があります。
サーバーエンジニア
サーバーエンジニアは、サーバー関連の開発を行います。ソフトウェアの基盤となるサーバーは、ユーザーからの要求に応じてデータを処理し、適切な結果を返すシステムです。なお、サーバーエンジニアはインフラエンジニアに含まれます。
インフラエンジニア
インフラエンジニアは、システム運用・通信ネットワーク管理などを担当し、サービスの安定供給を可能にします。障害発生時の迅速な対応やシステムの監視・メンテナンスも、インフラエンジニアの役割です。
プロダクトマネージャー
プロダクトマネージャーは、企業の戦略に合わせて成果を上げる役割を担います。目標達成に向けチームをまとめるプロダクトマネージャーは、SaaS企業の運営において重要な職種といえます。
SaaS営業で得られる、市場価値の高いスキル
SaaS業界は成長期から成熟期へと移行しつつあり、「未経験でも挑戦しやすい」というフェーズは終わりを迎えようとしています。だからこそ、今SaaS営業として働くことで得られる経験は、他の営業職とは一線を画す、市場価値の高い専門スキルに直結します。
データに基づいた課題解決能力
ROI(投資対効果)やLTV(顧客生涯価値)といった指標を常に意識し、データという客観的な事実を基に、顧客の課題を解決へと導く論理的な提案力が鍛えられます。
THE MODEL型組織での部門連携力
マーケティングからカスタマーサクセスまで、各部門が連携して顧客に向き合う組織で働くことで、ビジネス全体の流れを俯瞰する視点と、チームで成果を出すための連携力が養われます。
テクノロジーを使いこなすITリテラシー
SFAやCRMといった営業支援ツールを日常的に使いこなすため、現代のビジネスパーソンに必須のITリテラシーが自然と向上します。
LTV(顧客生涯価値)を最大化させる、深耕・育成スキル
SaaSビジネスは、一度販売して終わり、という「売り切り型」ではありません。顧客に契約を継続してもらい、さらに上位プランへのアップグレード(アップセル)や、別サービスの追加契約(クロスセル)を促すことで、顧客一人あたりの生涯価値(LTV)を最大化させることが求められます。
そのため、SaaS営業の現場では、短期的な売上だけでなく、「どうすれば、このお客様が長期的に成功し、サービスのファンであり続けてくれるか」という、顧客を育成する視点が徹底的に鍛えられます。この思考法は、全てのサブスクリプション型ビジネスに応用できる、極めて市場価値の高いスキルです。
SaaS営業で求められるのは「成果を再現する思考力」
SaaS営業の採用で、企業が最も重視するのは、あなたの「思考のプロセス」です。単に「高い成果を出しました」という実績だけでなく、「なぜ、その成果を出せたのか」を論理的に説明できる能力、つまり成果の再現性が求められます。
さらに、SaaSビジネスの特性上、質の高い活動を、高い生産性(量)で両立させることも不可欠です。具体的には、以下の3つの能力が評価されます。
課題を構造化し、仮説を立てる「論理的思考力」
SaaS営業における課題解決とは、顧客の曖昧な要望の裏にある、本質的な課題を特定することから始まります。複雑な状況を整理・構造化し、「本当の課題は〇〇ではないか?」という仮説を立て、検証していく論理的思考力が、質の高い提案の土台となります。
プロセスを仕組化し、量をこなす「生産性」
優れたSaaS営業は、自身の成功パターンを分析し、誰でも実践できる「仕組み」に落とし込む能力を持っています。これにより、一つひとつの活動の質を維持したまま、多くの案件を効率的に処理する「量」を担保できるのです。
関係者を巻き込み、事を前に進める「推進力」
顧客の課題解決は、営業一人では完結しません。社内の開発部門やカスタマーサクセス、そして顧客先の複数の部署など、多くの関係者を巻き込み、プロジェクトとして案件を前に進める推進力が、最終的な成果を大きく左右します。
SaaS営業への「未経験転職」は、もう終わり?求められる準備とは
かつてSaaS業界は、「未経験者でも挑戦しやすい」と言われていました。しかし、業界が成長期から成熟期へと移行しつつある現在、その前提は変わりつつあります。
企業は、もはや単なるポテンシャルだけでは採用しなくなり、未経験者に対しても、SaaS営業に即座に適応できる、具体的なスキルや思考力を求めるようになっています。
結論として、未経験からのSaaS営業への転職のハードルは、確実に上がっています。しかし、それは不可能になったという意味ではありません。以下の点をしっかり準備し、面接で語ることができれば、道は必ず開けます。
【未経験者に求められる3つの準備】
1. SaaSビジネスと、代表的なKPIへの深い理解
MRR、ARR、LTV、チャーンレートなど、SaaSビジネスの根幹をなすKPIを理解し、なぜそれらが重要なのかを自分の言葉で説明できることは、もはや最低条件です。
2. 「THE MODEL」型組織における、各職種の役割理解
マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスが、どのように連携して顧客の成功を実現するのか。その全体像を理解していることを示しましょう。
3. 自身の経験を「SaaS営業のスキル」に翻訳して語る能力
最も重要なのがこの点です。前職での経験(例えば、小売店の店長経験)が、SaaS営業に求められるスキル(例えば、データに基づいた課題解決能力)と、どのように結びつくのかを、論理的に説明できなければなりません。
上記の準備を徹底し、「なぜ、SaaS営業でなければならないのか」「なぜ、自分なら活躍できるのか」を語ることで、初めて未経験からの転職が可能になります。
SaaS営業からのキャリアパス
SaaS営業としてスキルを磨いた後、その先にはどのようなキャリアが広がっているのでしょうか。ここでは、SaaS営業経験者が描ける多彩なキャリアパスを、大きく3つの方向性で整理して解説します。
※参考記事:【SaaS営業のキャリアパスを徹底解説】SaaS営業に興味がある人必見!
1. 営業のプロとして、道を「深める」
まずは、営業としての専門性をさらに高めていくキャリアです。
- エンタープライズセールスへ:より難易度の高い大手企業向けの営業に挑戦し、トッププレイヤーを目指します。
- セールスマネージャーへ:チームを率い、自身の成功体験を組織へと還元していく、マネジメントの道に進みます。
2. 経験を「横に広げる」
営業の最前線で得た知見を活かし、隣接する専門職へとキャリアを広げる道です。
カスタマーサクセス:「契約獲得」から、「契約後の顧客を成功に導く」役割へとシフトします。
- 営業企画・セールスオペレーション:営業戦略の立案や、組織の仕組み化を通じて、営業組織全体の生産性向上に貢献します。
- マーケティング(PMM): 顧客の声を製品戦略に反映させる、プロダクトマーケティングマネージャー(PMM)などの道も開かれています。
3. 新たな領域へ「飛び出す」
SaaS営業で身につけた本質的な課題解決能力は、SaaS業界の外でも高く評価されます。
- 異業界への転職:例えば、論理的思考力が求められるコンサルティング業界や、他の成長業界の営業職などへ、市場価値の高い人材として転職する道です。
- 独立・起業:ビジネスの根幹である「売上を創る」プロセスを深く理解しているため、自ら事業を立ち上げる人も少なくありません。
後悔しないSaaS転職、成功のための3ステップ
SaaS営業への転職を成功させ、入社後に後悔しないためには、勢いだけで進めるのではなく、戦略的な準備が不可欠です。ここでは、特に重要な3つのステップを解説します。
Step 1: 自己分析で「転職の軸」を明確にする
まず、SaaS営業として何を成し遂げたいのか(Will)、どんな強みが活かせるのか(Can)といった自己分析を通じて、長期的なキャリアプランの土台となる、あなた自身の「転職の軸」を明確にしましょう。この軸が、この後の全ての判断基準となります。
※参考記事:自己PRに悩む人に送る!自分の強みを見つける3つのポイント
Step 2: 「軸」に合う、心から共感できる企業を選ぶ
次に、Step 1で定めた「軸」をコンパスとして、企業選びを行います。給与や待遇といった条件面だけでなく、その企業のMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)や企業文化が、あなたの価値観と深く共鳴するかを慎重に見極めましょう。この共感が、困難を乗り越えるモチベーションの源泉となります。
Step 3: 転職エージェントを活用し、入社後の「ギャップ」を防ぐ
自己分析と企業研究を重ねても、企業のリアルな内情を外から完璧に知ることは困難です。特に、多くのSaaS企業は独特の文化やスピード感を持つため、入社後にギャップを感じるケースも少なくありません。
そこで、転職エージェントの活用が非常に有効です。エージェントは、Webサイトには載っていない、リアルな社内の雰囲気や働き方といった内部情報を把握しています。プロの客観的な視点を加えることで、ミスマッチのリスクを大幅に減らすことができるでしょう。
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まとめ
SaaS営業は、豊かなキャリアパスが期待できる仕事です。未経験からでも転職できる可能性が高く、仕事を通じて汎用性が高いスキルを身につけられます。十分な企業研究を行い、自身が目指すキャリアを明確にして、転職先を検討しましょう。
SQiL Career Agentは、営業パーソンに特化した転職・キャリア支援サービスです。営業支援会社セレブリックスが運営しており、営業に関する深い知識や経験を有しています。定量アンケート・定性インタビューなどで収集したデータをもとに、応募者の強みを最大限に生かせる転職先をご提案します。SaaS営業への転職を検討中の人は、ぜひSQiL Career Agentにご登録ください。