インサイドセールスはやめとけ?辛さの正体と失敗しない企業選び

「今日も架電リストが100件。開く前から胃が重い」
インサイドセールスは「やめとけ」と言われることがあります。
しかしそのつらさの正体は、あなた自身の能力不足や根性の問題ではなく、架電ノルマの置き方や評価制度の設計といった会社側の組織構造にあるケースがほとんどです。
本記事では、「営業の転職」の著者であり、SaaSスタートアップでのセールスマネージャーを歴任した、SQiL Career Agent 初代事業責任者 梅田の知見を交え、「やめとけ」と言われる構造的な理由、テレアポとの違い、向き・不向きの見極め方、将来性や辛い環境を避ける対策まで解説します。
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インサイドセールスが「やめとけ」と言われる3つの構造的原因
「やめとけ」「つらい」という評判の多くは、個人の適性ではなく、会社の仕組みに起因する構造的な問題であることがほとんどです。
大量架電のノルマと断られ続ける状況で精神的ストレスが溜まるため
1日に100件近く架電しても、その大半は断られます。名乗った瞬間に切られる、担当者につながらない、つながっても間に合っていると言われる。インサイドセールスの現場では、こうしたやり取りが毎日のように続きます。
しんどさが増幅するのは、その架電が何のためのものかを自分の中で説明できなくなったときです。たとえば、
数字を追うだけで「今日、誰の役に立ったのか」が分からない 商談化した案件が受注できたのか、失注したのかさえ分からない 振り返りの場がコール数の未達確認だけで終わる
こうなると、架電は価値提供ではなく消化作業に変わり、疲弊するのは自然なことです。逆に、成果が評価や給与に反映される環境なら、同じ架電でも続けられる人は少なくありません。つまり架電がつらいという悩みの多くは、架電そのものではなく、その架電をどう位置づけているかという会社側の設計の問題です。
なお、責任と業務量が同時にのしかかる状態がストレスにつながることは、公的統計でも確認できます。厚生労働省「令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)」によると、仕事上の強いストレスの内容トップ2が下記でした。
仕事の失敗、責任の発生等 39.7%(正社員は42.9%) 仕事の量 39.4%(正社員は41.2%)
数字を背負う仕事のしんどさは、あなたの弱さではなく、多くの働く人に共通する構造的な負荷だということです。
「辞めたいと思うのは甘えなのでは」と感じてしまう方は、「営業がきついのは「甘え」じゃない。データと実例でわかる5つの原因と乗り越え方」もあわせてご覧ください。
マーケティングとフィールドセールスの板挟みになり組織内で孤立するため
インサイドセールスは、マーケティング部門とフィールドセールス部門のあいだに立つポジションです。
- マーケティングからは「もっと商談化率を上げてほしい」
- フィールドセールスからは「もっと確度の高い商談だけ渡してほしい」
と両方向から要望が集まる一方で、渡されるリストの質に課題があるとは言い出しにくい立場でもあります。うまくいったときの手柄はフィールドセールスのもの、うまくいかないときの原因はインサイドセールスに向けられる。そんな空気に、静かに消耗してしまう方も少なくありません。
ただし、視点を変えるとこの構造には別の意味もあります。両方の声が集まるのは、インサイドセールスが事業の交差点に立っているからです。マーケティングと営業をつなぐThe Model型組織において、インサイドセールスは橋渡しを担う中核ポジションと位置づけられます。板挟みは立場が弱い証拠ではなく、事業の要に立っている証拠でもある、というのが実務側の見方です。
そのうえで、孤立を和らげるために現場でできることもあります。渡した商談の結果を必ず追う、現場で得た一次情報をマーケティングに返す、といった動きです。これらは孤立感を和らげるだけでなく、転職時のアピール材料にもなります。
売上への直接貢献が見えにくく社内評価や年収が上がりにくいため
インサイドセールスがアプローチしたリードが受注に至るまでには、フィールドセールスなど他部門を必ず経由します。そのため「自分の頑張りが売上のどこに効いたのか」が見えづらく、評価や年収に反映されにくいという相談は非常に多く聞かれます。
背景にはもう一段、市場側の事情もあります。SaaS市場が成熟してくると、インバウンドの問い合わせだけでは商談数を確保しづらくなり、アウトバウンド型の新規開拓(BDR)が主体になっていく傾向があります。当然、アポ獲得の難易度は上がります。にもかかわらず評価軸がアポ数のままだと、難しくなった仕事を古い基準で測られることになり、努力と評価がズレるわけです。
実務側では、インサイドセールスの評価軸はアポ数ではなく商談化率・受注率といった質の指標へ移りつつあるという見方が広がっています。もし今の会社の評価が架電数・アポ数のみで決まっているとしたら、それは能力の問題ではなく、量を重視したテレアポ的な組織設計になっているサインとして受け取ってみてもよいかもしれません。
評価や待遇のミスマッチは、職種そのものへの不満に転化しやすいものです。これはインサイドセールスに限った話ではなく、転職者全体に共通する傾向でもあります。マイナビの「転職動向調査2026年版(2025年実績)」では、転職理由の上位が次のとおり報告されています。
さらに回答者の52.6%が、キャリアの停滞感を感じていたと答えています。給与や仕事内容への不満は、転職理由の最上位に並んでいます。評価されないという感覚は、あなた個人の思い込みではないということです。
SaaS営業そのものの実態については、「SaaS営業がきついと言われる5つの理由|実態と向いている人の特徴を解説」で詳しく解説しています。
テレアポとの決定的な違いとThe Model型での本来の役割
「結局テレアポと同じでは?」という問いは、インサイドセールスを検討する方がほぼ必ず突き当たるところです。ここを整理できると、「やめとけ」という言葉が自分にどこまで当てはまるのかが見えてきます。
セレブリックス営業総合研究所の「職種別営業スキルの調査レポート Vol.1」では、役割別に求められるスキルの上位5項目がランキング化されており、次のような結果でした。
上位の傾聴力・判断力・説明力・交渉力は共通しつつ、インサイドセールスは非対面での反論対応などの状況対応力が、フィールドセールスは相手に寄り添う共感力がより重視されます。土台となるスキルは共通していて、その上に役割ごとの違いが乗る構造です。まったく別の仕事ではなく、重なる部分の方が多いことが分かります。
なお、フィールドセールス側にも「やめとけ」と言われる事情があります。比較したい方は「フィールドセールスは「やめとけ」って本当?」をご覧ください。
架電アポと異なる「リードナーチャリング」本来の役割と本質
単純なテレアポは、リストに沿って架電し、アポイントの獲得そのものがゴールになる業務です。一方、インサイドセールス本来の役割はもう一段戦略的です。実務では、おおむね次の流れで設計されます。
ポイントは2つ目です。優れたインサイドセールスの指標はアポの数ではなく、受注率の高いトスアップができているかにあります。この観点で見ると、インサイドセールスがやっていることはかなりマーケティングに近い、という整理もできます。
こうした見込み顧客を中長期で育成し、適切なタイミングで商談化するプロセスはリードナーチャリングと呼ばれます。つまりインサイドセールスは、マーケティングとフィールドセールスをつなぎ、営業パイプライン全体を最適化するThe Model型分業体制の中核を担う存在です。
【The Model型における各部門の役割分担】
【見分け方のコツ】
どちらもテレアポ寄りに当てはまる場合は、職種名がインサイドセールスでも実態は量重視のテレアポに近い可能性があります。
The Modelとは、マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスが分業しながら連携する営業組織モデルのことを指します。
以下の記事で詳しく解説しています。
The Model(ザ・モデル)とは?職種別キャリアのリアルと面接官をハッとさせる逆質問
\ The Modelのどの役割に向いているか確認 /
SDRとBDRの仕事内容・適性の違いと年収レンジの見方
インサイドセールスの求人を読むと、「SDR」「BDR」という言葉をよく見かけます。ここは求人選びの精度に直結するポイントなのでしっかり抑えましょう。
このほか、オンラインで商談まで進めるオンラインセールスや、重要顧客に絞って組織的にアプローチするABM(Account Based Marketing)など、役割は企業によってさらに細分化されています。同じ職種名でも任される範囲がここまで違うと知るだけで、合わなかったのは自分ではなく環境だったと気づき、肩の力が抜ける方もいます。
インサイドセールスに向いている人・向いていない人の適性診断
「自分はインサイドセールスに向いているのか」を、性格の話ではなくスキルとマインドセットの観点から見ていきます。
インサイドセールスの現場の辛さの実態や向いている人の特徴は、「インサイドセールスが辛いと言われる理由と実態、身につくスキルとは」でも解説しています。
①インサイドセールスに向いている人の特徴
まず、インサイドセールスとして力を発揮しやすいのは、次のような特徴を持つ人です。
- 仮説を立てて検証し、うまくいかなければすぐに改善する、PDCAを素直に粘り強く回せる
- ヒアリングを通じて顧客の状況を引き出すコミュニケーションが得意、または好き
- 顧客の事業そのものに興味を持てる(持ちたいと思える)
- 一度作った型やスクリプトに固執せず、変化に好奇心を持って向き合える
このなかでも企業が未経験者に強く求めるのは、はじめの2点です。営業スキルの完成度ではなく、PDCAを回す素直さと粘り強さと、ヒアリング中心のコミュニケーション力が評価されます。
②インサイドセールスに向いていない人の特徴
一方で、次のような傾向がある方は、しんどさを感じやすくなります。
- 断られたことを自分への否定として受け取ってしまう
- スクリプト通りに話すだけで、改善の工夫をしにくい
- 相手の課題を想像して仮説を立てる作業に苦手意識がある
- 成果が見えにくい状態で、行動を続けるのがつらい
ただしこれらは、量を追う環境でとくに表面化しやすい特徴でもあります。実際、現場では次のような失敗例も起きています。
【失敗例】
インサイドセールス時代に架電数だけをこなし、顧客の課題を深く聞く経験を積まないままフィールドセールスへ昇格。商談の場でヒアリングが浅く、相手の本当の課題をつかめないままクロージングで詰まってしまう。
アポは取れたのに、話を前に進める力が育っていなかったパターンです。架電だけをこなす期間が長引くと、次のキャリアで効くスキルが積み上がらないというリスクがあり、向き・不向き以前に、どんな経験を積める環境にいるかが結果を左右します。
【30秒でできる自己診断】
Q1. 今、しんどいと感じるのはどちらですか?
A. 架電の数をこなすこと
→1日70〜80件のような業務量が合っていないだけで、BDRやABM型など戦略性の高い環境なら向いている可能性がありますB. 商談まで関われないこと
→フィールドセールスやカスタマーサクセスの方が適性があります
Q2. 仮説を立てる作業は、どう感じますか?
A. 面白い
→インサイドセールスの本質に向いていますB. 面倒だ
→時間があれば考えたいと思えるなら、環境の問題です。時間があっても気が進まないなら、対面で関係を築く仕事の方が力を発揮できます
Q1・Q2ともにAだった方は、向いていないのではなく、向いている環境に出会えていないだけの可能性が十分にあります。
ともにBだった方は、商談や対面で関係を築く仕事の方が力を発揮しやすいタイプです。回答がAとBに分かれた方は、まずは今の環境で働き方を変えられないかを試し、それでも違和感が残るなら職種の変更を検討する順番が安全です。
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インサイドセールスの将来性は?身につくスキルと市場価値
「インサイドセールスを続けても将来性がないのでは」と不安に思う方もいるでしょう。しかし実際には、インサイドセールス経験を通じて得られるスキルは、営業職としての市場価値を大きく高めてくれます。
CRM・SFAの活用スキルとBANT情報を引き出す質問術
インサイドセールスの現場では、CRM(顧客関係管理)やSFA(営業支援システム)を使い、顧客情報や商談進捗をデータで管理するスキルが自然と身につきます。「勘と気合い」ではなくデータで営業を語れることは、営業DXが進む今の市場でそのまま評価される要素です。
また、非対面のコミュニケーションのなかで、BANT情報※を的確に引き出すヒアリング力も磨かれます。
たとえば「予算はいくらですか」と直接聞くと警戒されがちです。実務では、以下のように言い換えましょう。
【実践のコツ】
のように相手の業務プロセスを尋ねる形に言い換えると、自然に情報が集まります。この聞き方の設計力は、フィールドセールスでもカスタマーサクセスでもマーケティングでも使える資産になります。会話が途中で切られる回数が減っていく実感は、そのまま自信の回復にもつながります。
このほかにも、インサイドセールス経験を通じて、仮説思考、構造化されたヒアリング力、デジタルツールを使いこなすコミュニケーション力、データやツールを活用する力、抽象的な話と具体的な話を往復させる力など、幅広い汎用スキルが身につくと言われています。これらは営業職に限らず、多くの職種で評価されるポータブルスキルです。
※BANT情報とは、Budget=予算、Authority=決裁権、Need=必要性、Timeline=導入時期の頭文字で、商談化を見極める際に確認したい4つの基本情報を指します。
キャリアパスは豊富!フィールドセールスやマーケターへの道
インサイドセールスの経験は、その後の多様なキャリアパスへの土台になります。
【インサイドセールス 経験者のキャリアパス例】
ハイレベルなインサイドセールス求人の選考では、「アポ数」のような量の実績ではなく、戦略的な思考力と、フィールドセールスとの連携で受注率を改善したといった定量的な改善実績が重視されます。
キャリアを考えるうえで、年収がどう決まるのかも気になるところだと思います。
年収は「頑張った量」では決まりません。次の3つの掛け算で決まる側面が大きいと考えられます。
年収 = 市場規模(構造) × 評価・還元制度 × スキル
頑張っても上がらないと感じるときは、この掛け算のどの項目がボトルネックになっているかを見るのが有効です。
段階別のレンジは、あくまで当社の見立てによる参考値として、次のようなイメージです。
ここまで上がるには何年もかかりそうだと感じて少し気持ちが沈んだ方もいるかもしれません。ただ、このレンジは今のあなたの価値ではなく、どの環境を選ぶかで動く数字です。SaaS業界での環境の選び方は、「SaaSのフィールドセールス・スタートアップのインサイドセールスへの転職」もあわせてご覧ください。
なお、より高い年収を目指す場合、一般的にはエンタープライズ向けSaaSのフィールドセールスの方が有利とされることが多く、インサイドセールスはプロセスの一部と見なされやすい側面もあります。また、SaaS業界全体では市場規模や単価の制約から、年収の上がり幅がある程度で頭打ちになりやすい点も知っておく必要があります。
インサイドセールスの辛い環境を避ける転職対策と業務改善
ここまで見てきたように、「やめとけ」と言われる辛さの多くは、会社の仕組みに原因があります。転職を考える前に、まずは今の環境でできる工夫と、次の環境を選ぶ際のチェックポイントを押さえておきましょう。
①今の現場でできる業務改善
インサイドセールスの評価は、コール数・アポ数といった量だけではなく、商談化率・受注率の質も含めて見られるべきです。
とはいえ、KPIを個人がすぐ変えられるわけではありません。ただ、評価の基準そのものは変えられなくても、語れる材料を自分の手元に増やすことはできます。自分で握れるものが一つ増えるだけで、数字に追われている感覚は少し薄れます。評価の土台を自分から作っていくアプローチが現実的です。
②「辛い現場」を見極める3つの企業選び判定チェックリスト
転職を選択肢に入れる場合、面接で必ず確認しておきたいのは次の3項目です。いずれも求人票からは読み取れず、入社後の満足度に直結します。聞いたら印象が悪くなるのではと不安になるかもしれませんが、こうした質問は入社後の働き方を具体的に想像している証拠として、むしろ好意的に受け取られます。
このほか、MA/SFAなど営業DXツールの導入状況、マーケティング部門の有無、リード獲得の方法や企業の将来性、年収レンジの妥当性は、求人票や企業サイトからある程度読み取れます。事前に目を通しておくと、面接では上の3項目に集中できます。
とくにリモート下の連携体制は、これからの環境選びでより重要度が上がる項目です。総務省「令和6年 通信利用動向調査(企業編)」によると、企業のテレワーク導入率は47.3%で、前年から減少に転じました。オフィス回帰の動きが出ている一方、依然として半数近くの企業がテレワークを続けているため、応募先が今どちらの方針なのか、そして非対面でのフィールドセールス・カスタマーサクセス連携がどこまで仕組み化されているかは、面接で必ず確認しておきたいところです。
あわせて、求人票を読むときの注意点を3つ挙げておきます。
同じ職種名でも中身は別物
目的や事業フェーズによって仕事の中身は大きく変わりますが、その違いは求人票に書かれないことがほとんどです。 数字から実態を読み取る
担当社数や接触頻度が目安になります。担当7社で1日2訪問なら、新規開拓より既存顧客の対応が中心だと推測できます。 情報が少ない求人は慎重に
採用代行を経由していて現場の話を聞けない求人は、入社後のギャップが生じやすくなります。
気になる企業は、面接やエージェントを通じて実態を確かめてから判断しましょう。
まとめ 環境選びとスキル習得で失敗なくキャリアを高めよう
インサイドセールスが「やめとけ」と言われる背景にあるのは、架電ノルマの設計や評価の見えにくさといった組織構造上の課題です。自分の能力不足だと思う必要はありません。リードナーチャリングやCRM・SFAの活用力は、フィールドセールス・カスタマーサクセス・マーケティングへと広がるキャリアの土台になります。
辛さの正体がノルマだけではないことは、統計にも表れています。doda「転職理由ランキング2025」で、売上目標やノルマの厳しさを転職理由に挙げた人は3.3%にとどまります。辞めたくなる決め手はノルマそのものより、評価のされ方や人との関わり方にあるということです。だからこそ、環境の見極めが大切になります。
もし今の環境に違和感を覚えたら、次の順番で動いてみてください。
「やめとけ」という言葉は、万人に当てはまるわけではありません。同じ職種でも、評価のされ方と任される範囲が変われば、しんどさの中身は別のものになります。
今の環境がどちら側なのかを自分だけで見極めるのは簡単ではありません。SQiL Career Agentでは、インサイドセールスの実態を踏まえたキャリア相談を無料で行っています。迷いがある方は、ぜひ一度ご相談ください。
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