商社営業ってどんな仕事?きついと言われる理由や将来性、キャリアパスまで徹底解説!
商社営業は高収入を得られると言われることが多いほか、花形職業のイメージもあるため、この業界に憧れを抱いている人は多くいるのではないでしょうか。また、国内にとどまらず、海外に羽ばたける機会もあるため、海外で働きたい人にも人気です。
とはいえ、商社営業は仕事のスケールが大きいだけに日々の業務は大変です。商社営業はきついと言われることもあります。自社が扱う商品についての深い理解が求められるほか、商談力も必要になるためです。
本記事では、商社業界の概要を押さえた上で、商社営業について仕事内容、魅力・やりがい、年収事情、「きつい」と言われる理由などを見ていきましょう。
目次[非表示]
- 1.商社業界とは?
- 2.商社営業の仕事内容とは?
- 3.商社営業とメーカー営業の違い
- 4.商社営業の魅力・やりがい
- 4.1.仕事のスケールが大きい
- 4.2.幅広い知識が身につく
- 4.3.営業として商談力が身につく
- 4.4.高年収を得られる可能性がある
- 4.5.グローバルに活躍ができる
- 5.商社営業の年収事情
- 6.商社営業の「きつい」と言われる理由
- 6.1.仕事量が多く忙しい
- 6.2.勤務時間が不規則
- 6.3.出張や転勤が多く過酷
- 6.4.メーカーとユーザーの板挟みになる
- 6.5.顧客との付き合いが多い
- 7.商社業界の現状と将来性
- 7.1.総合商社はコロナ禍で大きく影響を受けた
- 7.2.専門商社は安定している
- 7.3.働き方は今後も対面中心
- 7.4.事業の多角化が進んでいる
- 8.商社営業のキャリアパス
- 8.1.管理職・マネジメントへの昇進
- 8.2.同業他社の営業職
- 8.3.外資系企業への転職
- 8.4.コンサルファームへの転職
- 8.5.独立・起業
- 9.まとめ
商社業界とは?
商社業界とは、商品やサービスの売り手と買い手を仲介し、販売する業界です。この業界で扱う商品やサービスは多岐にわたり、食品、繊維、原料、機械、インフラなどさまざまです。
また、商社は売買の仲介的な役割を担うだけではなく、商品の製造をサポートしたり、物流のネットワークをつくったりすることもあります。さらに、商社業界の中には事業経営に取り組む企業もあります。例えば、病院や小売店を海外で経営したり、海外で水産業に進出したりする企業もあります。
以下で詳説するように、商社業界には総合商社と専門商社があり、業務内容がそれぞれ異なります。
総合商社
総合商社は産業分野のあらゆる商材の取り扱いを行っています。利益は売り手と買い手とを結び付けることで主に得ています。
日本における総合商社は以下の7社です。
- 三菱商事株式会社
- 三井物産株式会社
- 伊藤忠商事株式会社
- 丸紅株式会社
- 住友商事株式会社
- 双日株式会社
- 豊田通商株式会社
得意とする分野や商品などは企業によって異なりますが、上記の7社いずれも国内外でさまざまな事業を展開しています。
専門商社
専門商社は扱う商材が特定の分野・商品に特化しています。総合商社は自社内で幅広く手掛けている一方、専門商社は特定の分野・商品に限定して、専門性の高いサービスを提供しています。
例えば、専門商社には以下のような商社があります。
- 食品商社
- 鉄鋼商社
- 医薬品商社
- 半導体商社
- 化学商社
- 燃料・エネルギー商社
- 繊維商社
専門商社は特定の商品を扱っていますが、1つの分野・商品に限定しているとは限りません。企業によっては複数の分野・商品を手掛けています。
専門商社は特定の分野・商品に限定することで運営やコストの削減を実現でき、利益率を高められます。
商社営業の仕事内容とは?
商社営業に転身したい人の中には、商社営業とはどのようなものなのか疑問に思う人も多いと思います。
商社営業の仕事内容はさまざまですが、主に以下の3つです。
それぞれ確認していきましょう。
販売先に対する営業
販売先に対する営業では取引先・販売先にアプローチし、相手と良好な関係を築きながら自社の商品を提案します。アプローチ方法は訪問や接待、電話、メールなどさまざまです。
販売先への営業には新規顧客獲得のための営業と既存顧客のフォローの2種類があります。
-
新規顧客獲得のための営業
新規顧客獲得のための営業では、自社商品を売り込み、販売先を開拓します。既存顧客が離れてしまうと収益が減少するため、顧客の開拓は継続的に行わなければなりません。 -
既存顧客のフォロー
既存顧客のフォローも商社営業において重要です。新規顧客にばかり手厚く対応していれば、自社の顧客離れにつながります。サービスの安定的な供給のためにも、リピーターを絶やさないよう努力することが求められます。
利益を確保する営業
商社の営業は仕入をいかに安価に行えるかが鍵となります。商社は安く仕入れ、高く売ることで利益が出るため、いくらで仕入れられるかは利益の根本に関わります。
仕入れ額を抑えられるかどうかはメーカーなどとのつながりが鍵になります。営業方法としては仕入れを希望する商品を扱うメーカーが開催するイベントに参加し、ファーストコンタクトをとり、商談を持ちかけます。
また、継続的な販売を行うことで仕入れ額を抑えることも可能です。メーカーは自社商品を継続的に販売したい、安定した収入源を確保したいと考えています。仕入れを継続的に行うことを条件に仕入れ額を優遇してくれることもあります。
商材を探す営業
商社営業にとって自社が扱う商材を探すのも重要な仕事です。社会的なニーズが高まりそうなものやトレンドを先読みして仕入れを行います。
その商材が流行った後では仕入れ先の在庫が不足したり、高値での取引になったりするため、大きな利益を生み出すには先を読む力が重要です。
商材を探す営業ではイベントに足を運ぶ機会もあります。世間ではあまり話題になっていないものを扱う展示会などが企業向けに開催されているので、こうしたイベントで流行りそうなものに着目したり、メーカーの担当者から詳細を聞いたりします。
また、SNSやニュースなどから社会のニーズを汲み取り、どのような商品が今後求められるのか予想し、仕入れを行うこともあります。
商社営業とメーカー営業の違い
商社営業とメーカー営業は仕事内容が混同されることも多いですが、実情は大きく異なります。というのも、商社は自社商品を持たないのに対し、メーカーは自社商品を持っているためです。
商社営業は自社で開発や製造した商品ではなく、メーカーが製造した商品を販売します。このため、自社の商品にとらわれず、顧客に商品を客観的な視点で提案することが可能です。また、取り扱う商品の種類はメーカー営業よりも多いので、さまざまな商品に触れる機会があります。
また、商社営業では商品に関する知識だけではなく、マーケットを分析する能力が求められます。マーケットを分析できればコンサルティング営業のような提案を顧客に行えます。
一方、メーカーの営業が扱うのは基本的には自社の商品です。メーカーの営業は商品ごとに担当が細かく分けられることも多いため、自分が担当する商品についてはどのような質問にも答えられるよう、深く理解しておく必要があります。また、メーカーの営業は販売後も顧客と関係を継続し、サポートなども行います。技術面についても理解しておくことが求められます。
商社営業の魅力・やりがい
商社営業をしているとさまざまな人や商品と関わる機会があるため、充足感を抱きながら働けます。
魅力・やりがいが多いといわれる商社営業ですが、その中でも大きな魅力・やりがいとして、以下の5つが挙げられます。
それぞれ確認していきましょう。
仕事のスケールが大きい
商社営業はスケールの大きな仕事をしたい人にもおすすめです。国内にとどまらず、グローバルに活躍できる機会を得ることも期待できるため、世界を股にかけて活躍したい人も夢を実現できるでしょう。
また、商社営業では取引1つあたりの金額が大きいものが多くあります。契約を獲得した際には大金が動くため、仕事のスケールは大きくなります。
担当する業務において動く金額が大きいことからも責任は重く、激務になりがちですが、充足感を抱きながら働きたい人も満足できるでしょう。
幅広い知識が身につく
商社営業ではさまざまな商品を扱うため、あらゆる分野における知識を取得できます。
また、取り扱う商品の仕入先を探す際には社会情勢を鑑みたり、リサーチを行ったりするので、社会や国際情勢、トレンドについても詳しくなります。
営業として商談力が身につく
商社営業では幅広い種類の商品を取り扱い、中立的な立場から顧客に提案を行います。相手の課題やニーズを汲み取った提案をする力が身につきます。
また、商社営業は1つの取引で大きな金額が動くことも多く、商談相手は決断に慎重になりがちです。複数の商談を経験することで、トーク力や対人力、提案力なども高まります。
高年収を得られる可能性がある
商社業界の年収は日本の平均年収よりも高いといわれています。近年における日本人の平均年収は450万円前後ですが、商社業界(特に総合商社)には30歳で年収1,000万円を超える人も多くいます。
年収が高い分、ハードワークであったり、求められることのレベルが高かったりしますが、自身を短期間で成長させられるはずです。
グローバルに活躍ができる
企業や担当する商品などにもよるものの、商社営業はグローバルに活躍できる可能性が高い職業の1つです。海外の企業と商談を行ったり、国外支店に派遣されたりすることもあります。仕事で海外に行けたり、海外で生活できたりする機会を得られるかもしれません。
商社営業は国内外で業務に従事する機会があるほか、外国人とコミュニケーションをとる機会も多いので、語学力が高い人にもおすすめです。語学が堪能な人は優先的に海外とのつながりがある業務の担当になることもあります。近年は英語以外の言語も商社営業において高いニーズがあります。
商社営業の年収事情
マイナビエージェントの「業種別平均年収ランキング」によると、商社全体の平均年収は384万円です。20代前半は294万円ですが、30代後半になると447万円と年収が高くなっています。
ただし、商社営業の年収は一概に言うことができません。平均年収は年齢だけでなく、企業や扱う商品、役職、営業成績などによっても異なります。
総合商社は商社営業の中でも平均年収が高い傾向にあり、30代で年収が1,000万円を超える企業もあります。
日経転職版の「大卒年収調査2023年版 業界別編 総合商社が1329万円でトップ」によると、総合商社の平均年収は1329.6万円という結果が出ており、これは20代の全業界別平均年収でみてもトップになります。
商社営業の「きつい」と言われる理由
商社営業にはきついというイメージがあるため、この職業に転職を考えている人の中には不安を感じている人もいると思います。
商社営業の「きつい」と言われる理由として、以下の5つが挙げられます。
それぞれ確認していきましょう。
仕事量が多く忙しい
商社営業は仕事量が多く、多忙な職業であるとよく言われています。商談前には商品の情報や商談相手に関する情報を集め、目を通しておく必要があります。さらに、商談で話す内容もある程度考えておかなければなりません。商談は頻繁にあるので、準備だけでも仕事量は多くなりがちです。
また、多くの企業において売上の報告書、社内向けの資料の作成なども商社営業が行います。
勤務時間が不規則
商社営業は海外在住の人と連絡を取り合ったり、商談をしたりすることも多く、勤務時間は不規則になりがちです。担当する商品や相手によっては早朝や深夜に対応に追われる日もあります。
また、接待なども多く、帰宅時間が遅くなる日も多いです。
出張や転勤が多く過酷
多くの商社が国内外に複数の支店をもっているので、商社営業はさまざまな場所に足を運ぶ機会があります。
頻繁に出張が入ることも多く、体力的にきついと感じる人もいますし、転勤が多く、居住地が定まりにくいため、ライフプランを立てにくいと思う人もいます。
メーカーとユーザーの板挟みになる
商社営業は自社商品を扱わないゆえに大変なこともあります。商品の売り手であるメーカーは商品をできるだけ高く売りたいと考える一方、商品の買い手であるユーザーはいかに安く購入するかを重視しています。
商社営業は正反対の立場にあるメーカーとユーザーを仲介する役割があるので、両者の間で板挟みになるケースもあります。
顧客との付き合いが多い
商社営業は顧客との付き合いを大切にします。取引先と良好な関係を維持するために、就業後に接待に参加したり、休日にゴルフコンペに参加したりすることもあります。
顧客との付き合いが多いため、プライベートな予定を立てにくいといった悩みを抱える人もいます。
商社業界の現状と将来性
先行き不透明な時代、各業界で働く人たちが将来に不安を抱えていますが、商社業界においてもそれは同じでしょう。
商社業界の現状と将来性を把握する上で、以下の4つの観点が重要です。
それぞれ確認していきましょう。
総合商社はコロナ禍で大きく影響を受けた
総合商社に入社できれば安心というイメージを抱きがちですが、コロナ禍では必ずしもそうではないことが分かりました。
大手総合商社の中にはこれまで売上を下支えしてきた原料炭や液化天然ガス、自動車の売上が大きく減りました。これにより、関連会社の整理などに動いた商社もあります。
参照:東洋経済オンライン「三菱商事と伊藤忠、コロナで生じた決定的な差 明暗分かれた両社、5年ぶりに業界首位が交代へ」
専門商社は安定している
専門商社は特定分野の商品に特化し、貿易事業を営んでいます。日本にビジネスが存在する限り、専門商社は社会において不可欠です。
専門商社は特定の分野に特化して事業を営んできた情報網により、将来性のある分野をうまく選定できる傾向にあります。
働き方は今後も対面中心
多くの業界においてリモートワークや非対面の営業が進んでいますが、商社業界は今後も対面中心といわれています。
顧客やメーカーとの信頼関係を大切にしているので、接待やゴルフなどのイベントは今後も行われるでしょう。
また、1つの商談で動く金額が大きい傾向にあるため、直接会って話し合うことが好まれています。
事業の多角化が進んでいる
事業の多角化とは、企業が既存の事業以外にも新たな事業を立ち上げ、参入することです。事業を多角化することで従来の事業で利益を得にくくなっても、別事業で利益を確保できます。
例えば、大手商社の中には資源の有効活用が求められる世の中を鑑みて、サーキュラーエコノミーに注力する企業もあります。商社においても社会情勢や世の中のニーズによって事業内容は変化します。
参考:Reinforz Insight 「新時代の商流を創造する双日:最新事業と未来戦略」
商社営業のキャリアパス
商社営業に転身を考えている人の中には、この職業のキャリアパスについて知りたい
人も多いはずです。
商社営業にはさまざまなキャリアパスがありますが、以下の5つが挙げられます。
それぞれ確認していきましょう。
管理職・マネジメントへの昇進
商社営業として十分な経験を積んだら、管理職・マネジメントへの昇進を期待できます。
営業職に営業部長、営業課長といった管理職を設けている企業は多いですが、商社業界においても同様です。商社を含む多くの企業において管理職やマネジメント職は現場での経験が十分にある人が任されます。
また、商社を含む組織には部下をマネジメントする立場の人がいます。長く働いていれば、部下に営業の方法を教授したり、部下の相談にのったりするマネジメント職に就ける可能性もあります。
ただし、管理職やマネジメント職には営業力だけでなく、人間力も求められます。他の社員から尊敬され、慕われる人柄であるかも重視されます。
同業他社の営業職
商社営業で活躍した人や大きな成果を出した人の中には同業他社の営業職に転職する人もいます。
憧れていた同業他社に実績をつくることで転職できる可能性もあります。より規模が大きい同業他社に転職する人、同業他社における自分が興味のあるポジションに転職する人などさまざまです。
💡営業職の種類についてこちらの記事をご参考ください。
営業職大全 -営業って●●種類もあるの?!-
外資系企業への転職
外資系企業の中には能力が高い従業員に高い年収を支払う企業も多くあります。総合商社は日系企業の中でも年収は高めですが、外資系企業の中にはそれ以上の給与を従業員に支払っている企業もあります。
商社営業で培った語学力や商談力、社会人としてのポータブルスキルは外資系企業の営業でも活かせます。
大手商社から外資系企業の管理職や企業における重要なポジションに転職する人も珍しくありません。
💡実際に日経→外資企業に転職された方の体験談が知りたい方はこちら
日系企業から大手外資系企業に転職して感じたギャップ
コンサルファームへの転職
前に説明したように、商社営業では商品を顧客に売り込むだけでなく、相手が抱える課題を解決に導くことも求められます。コンサル系の役割経験がある商社営業出身者は多いため、コンサルファームで歓迎されることも多いです。
コンサルファームでは商社営業で培ったさまざまな知識を活かせる機会が多くあると思います。
独立・起業
商社営業から独立・起業に成功した人も多くいます。商社営業では汎用性の高いスキルを多く身につけられるため、会社に依存せずに独力でビジネスを営めるようになります。
また、営業経験者は顧客にアプローチする力も備わっているため、独立しても利益をうまく獲得できるケースが多いです。
商社営業出身者の中には個人で輸入品を扱うショップを営む人、コンサルティング系のビジネスを営む人などさまざまです。
💡キャリアプランの立て方についてはこちらの記事もご覧ください
【キャリアプランってどう立てたらいいの?】キャリア形成を考えるポイントを徹底解説
まとめ
商社営業は社会における最先端のものに興味がある人や海外の文化に興味がある人、語学に自信がある人にもおすすめできます。
商社営業はメーカーなどの営業と比べて仕事のスケールが大きく、やりがいがある一方、大きな責任も発生します。1つの取引で動く金額が大きいため、商談相手は慎重になりがちです。商談を成功させるのは難しいですが、うまくいったときの喜びは大きいと思います。
商社営業ならではの苦労もありますが、国内外を飛びまわり、社会の基盤や国民生活を支える仕事にやりがいを感じる人は多いはずです。
SQiL Career Agentでは、 さまざまな業界の営業職に関する知見を持っています。
商社業界について知りたい方は、まずはこちらからSQiL Career Agentにご相談ください。